旅するランナー

熊は、いない/ノー・ベアーズの旅するランナーのレビュー・感想・評価

4.6
【パナヒは、いる】

イラン人監督ジャファル・パナヒが自分自身を演じています。
イラン政府から映画製作と海外渡航を禁じられているため、国境近くの小さな村からパソコンを使って遠隔操作で助監督に指示を出して映画作りをする監督の役です。
そして、古いしきたりに固執する村人たちのトラブルに巻き込まれていきます。

今作の中でも「仕事なし、自由なし、未来なし」と国を批判したり、コーランよりも映像に誓いを立てる、映画人としての矜持を示します。
政府から睨まれることは承知の上なんでしょう。
声高に主張するわけではありません。
あくまでユーモアと皮肉に包みこんで、政治体制や自身を取り巻く深刻な状況への憤りと抗議を提示します。
そんな勇気ある映画人パナヒ監督を、僕は信頼します。