[モニカの帰郷と静かな和解] 60点
アンドレア・パラオロ長編三作目。主人公モニカは美しい女性で、常に性的な目線に晒されている。彼女と男たちの関係性は、彼女が依存症的関係性に陥っているジミーへの電話やカムガールの仕事をしているシーンなど間接的な言及もあれば、冒頭のナンパや行きずりの男とのセックスなど直接的な言及もされている。あるとき、モニカは兄嫁ローラから連絡を受ける。かつて自分を捨てた母親ジニーの死期が近いらしい。しかし、映画はその確執の正体もモニカと母親との関係性もほとんど明示しない。アカデミー比の小さな画面には身体も顔も部分的にしか映らず、鏡による反射、ビーズカーテンや暗闇によって隠され、横顔を多用して視線も交わらない。ただただ静かに、モニカの行動を捉えることで、心情に寄り添っていく。そして、人間同士の繋がりはフィジカルな触れ合いだと言わんばかりに、セックスや風呂やビーチ、鬼ごっこ、写真撮影などでにおける"触れ合い"が強調される。あまりに静かすぎて、何もかも曖昧で深みが無さそうに見えるのは、"和解"に必要なものの欠如に起因しているのだろう。個人的には、"何があったか"ではなく、"何をするか"が重要だ、ということなのだろうと好意的に解釈しているが、深い溝があっさり埋まってしまうところに、監督は深刻な家族喧嘩とかしたことなさそうだなとは感じる。
モニカを演じるトレース・リセットはトランス女性であり、モニカも同じくトランス女性である。なので、母親はモニカが自分の子供であることに気付いてないか、気付いてないふりをしている。本作品の夢物語感はテーマから逃げているようにも見え、当事者にとって結構キツい部分もあるのではないかと容易に想像できてしてしまう(事実、LBでの評価は散々なもの)。なんか、手放しには褒められないっすわ。