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アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~のcinemageekのレビュー・感想・評価

4.3
アルゼンチン1985 〜歴史を変えた裁判〜

監督/サンティアゴ・ミトレ

脚本/
サンティアゴ・ミトレ
マリアーノ・リナス
マルティン・マウレギ



アルゼンチン最後の軍事独裁政権(1976年-1983年)の首謀者を追訴した1985年の臨時政府裁判

軍事独裁政権下のアルゼンチンでは政府による数々の非道な拷問や暴力が蔓延していた。

1983年12月、アルゼンチンでは7年ぶりに民政が復活したが、軍事政権の間に起きた弾圧の責任を軍幹部に追及することはできていなかった。

ひとりの検事が立ち上がる。犠牲者たちに正義をもたらすため、検事のチームは脅しや困難に屈せず、歴史的な裁判に必要な準備を始めていくが…。



1976年3月、ホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍がクーデターを起こし、当時のイサベル・ペロン大統領(世界初の女性大統領でした)を追放

軍事政権へと移行

しかしビデラ政権は経済政策で大失敗し、1983年の大統領選挙と議会選挙によって軍事政権は終わりを告げることになる

その 軍事政権下の影響力がまだまだあるなか、1983年に行われたのが、軍事政権下で行われた残虐的弾圧に関する軍幹部の責任を問う臨時政府裁判
この裁判を描いた実話をベースにした映画


とにかく 軍事政権が選挙で終わったとはいえ、まだまだ政権中枢はもちろん司法関係者にも軍人と関係が強い検事、判事、弁護士が多数いた時期

それ故に 裁判への道のりの途中では様々な障害がうまれる
それは裁判に向けての考え方や罪を認めさせるための道筋。

時には対立をすることもある

そして証人の登壇に向けての難しさ

多くの人が軍人に酷い扱いを受けたことを話す気持ちはあっても、報復を恐れるひとも多数出てくる。
さらに街なかでの尾行やスパイによる情報の探りや妨害はさまざまな形で現れる
それは直接的な暴力でもないからこその恐怖であり、不安


そして軍部上層部を裁けるかどうかの不安
現場の軍人による暴力や性被害などの証言は集まるもののその責任を上官や軍上層部。そして最高指導者に責任を追わせることができるのか?
という部分は、裁判が始まっても不安なまま進んでいく。

とにかく
若い人の軍事政権への不満からの行動には
熱い何かを感じるはず

その中で最後の フリオ・セザール・ストラッセラ の
ラスト前の10分間におよぶ演説は
軍人支配から脱出をしたアルゼンチン民衆の心の声であり、
自由の大切さを語る。

それは 被害者の方々の悲痛な思いとともに
残忍 秘密裏 卑怯な行いをした軍人たちへの責任を取らせる必要性を訴える
このシーンは圧巻で必見

平和であることの感謝とともに、わずか40年ほど前に実際にあったことをしればしるほど、今の日本の自由と平和が いかに世界で見たときに貴重なものであるか
大切であるかを感じさせられる


実際の裁判の映像もインサートされるところも含めて、この映画のクライマックスは静かにそして演説の終了とともに 人権の大切さを感じることは間違いない

実際に裁判は満足する結果の軍人もいればそうではない者もいる
それに対して控訴するところでエンディングに入り、
この裁判はまだ続いていることが字幕で語られる
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