ピロシキ

バルド、偽りの記録と一握りの真実のピロシキのレビュー・感想・評価

3.5
イニャリトゥ流、マジック・リアリズム。ストーリーよりもイメージを目に焼き付ける。空飛ぶ人間の影から幕を開ける自伝的作品は、監督自身が「目を閉じて自らに向き合う必要があった」と言う通り、内省的で、ちょっと陰気で、エンタメ要素は低い。

登壇したイニャリトゥ監督は「心象風景を正しく映像に変換することの困難さ」について話していた。トークの後に上映された『バルド』は、その課題を容易くクリアしているようにすら思えた。全編擬似ワンカットで既におじさんを空に飛ばしていた『バードマン』と、雪山でディカプリオに熊との死闘を演じさせた『レヴェナント』を経て、イニャリトゥ監督による映像表現のレベルが相当な高みに達していることを証明する力作だろう。

とはいえそんな映像よりも、とにかく目で追い続けたのは字幕であります。皆んなまあ口々によく喋る。イニャリトゥ監督自身もまたおそらく、喪失や挫折のたびに周りからの「言葉」の数々に支えられて乗り越えてきた人なのだろうと思う。
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