TakeBtz

バルド、偽りの記録と一握りの真実のTakeBtzのレビュー・感想・評価

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主人公(要はイニャリトゥ)自身のメキシコ人であるというルーツと映画監督としての地位での葛藤。

批評家の評価と自身の表現との間に生じる齟齬への不満。

家族と“ある息子”への想い。

言いたいこと、やりたいことも分かる!

良い映画だし、凄い技術と演出なんだが……

内容はといえば「イリャニトゥ版『8 1/2』」ですが、とにかくエモと尺のバランスが悪過ぎる!

正直トレイラーが最高過ぎて、過信してしまった小生も悪い。

作劇構造としては主人公がジャーナリスト兼映画監督という二足の草鞋という所がミソで、15世紀から始まったスペインの植民地化〜米墨戦争という歴史問題(鑑賞前にこの辺りのwikiぐらいは読んどいた方が吉)から、現在の移民/人種問題を側面に置きながらも表現者としてアメリカで映画を撮ること、その成功により富裕層の仲間入りをすること、反面ジャーナリストとして貧困層や移民に寄り添いたい思い、子供を失った悲しみ……。

そのどれもが主人公にのしかかり苦悩する姿は、まさにフェリーニの『8 1/2』なんですけどね。

それを劇中で「お前の映画はパクりだろ」とか批評家に云わせる自虐もあったりと、ギャグとちょっとブラックなコント集を、死ぬ程美しい景色を背景に絵画的に撮りましたって感じの映画です。

この映画、見ながら感触として思い出したのは北野武の『TAKESHIS’』なんですが、鑑賞した方どうですか?

あくまで個人的な感想ですが、まとめると、良い物語と最高に美しい画作りと演出なのに、尺が長過ぎて飽きました。

初めて今作のトレイラーを観たときは、ビートルズ『I am the walrus』と映像にやられて、号泣するほどでしたが(そんな自分もどうかしてる)、本編で涙は枯れました、悪い意味で……。

この映画がネトフリで何分再生されるか不安しかありませんが、好きな方はかなり集中して観れば、物凄い映画体験になるかと思います。

僕も終盤で家族が浜辺で“ある想い”を海へと流すシーンでは、熱い想いが込み上げてきましたし、僕の中では、あの場面が今作の白眉に思います。
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