延々と歩く

バルド、偽りの記録と一握りの真実の延々と歩くのレビュー・感想・評価

3.2
 世界的有名人になってしまったメキシコ人を主役に、彼の古巣たるメディア業界やら地元の親類たち、家庭問題やアメリカで育てた子供たちとの関係が幻想的な映像で語られる。

 こういう風刺的芸術大作は知的なアタクシが評価してあげましょうと思ったけどまったく手に負えなかったわ。

 最初に出てくる「分娩室で出産された赤ちゃんが、外の世界が嫌になってまた子宮の中にもぐりこんでしまう」というギャグは好き。

 旧友のもってるテレビ番組に出してもらうが「アメリカのせいでメキシコはこのざまなのに、そいつらに賞をもらって嬉しいか!」と皆の前で愚弄されまくる場面にも、現代のグローバル資本主義で勝っちゃった人の苦悩がよく出ている。

主人公の娘を演じるヒメナ・ラマドリッドはかわいいしインスタもフォローした。かわいいおサルさんみたいなルックスにLOVEずっきゅんである。イノセントな佇まいにも「んほぉ~たまんねえ」状態。

 しかし個人的に乗れるのはそこまでで、あとはなんかよう分からんかった…。「ネットフリックスは劇場を持たない配信サービスなので時間の制限がなく、そのためスタッフ達に好き勝手させ過ぎ」との批判を聞いたことがあるが、ちょっとそういうのも関係してそう。この映画も長いんだよな~。

 「巨匠になった世界的監督の自己満足映画」みたいな評価もあるそうだが、ま~どこまで批判したもんだか間合いをはかりかねる。

 SNSならタダで好きな事をなんでもかけるけど、イニャリトゥ氏は大予算とスタッフを必要とする映画監督だからなー。政治的にもっとつっこんだネタをやってよーとこちらは気軽にいえるけど、それじゃスポンサーがつかないとか、ついたところで「ポリコレとか気にせずメチャクチャやる監督」みたいなレッテル・リスクを皆が背負っていきたいわけでもないだろうし…。

 いち映画ファンとしてはそろそろそういう作品が見たくなってきた感じはあるが。「トップガン マーヴェリック」は別の意味でそんなヤツだったかもしれないし、なにか一発あればあっという間に状況は変わってしまうかも。
延々と歩く

延々と歩く