コマミー

エターナル・ドーターのコマミーのレビュー・感想・評価

エターナル・ドーター(2022年製作の映画)
4.1
【母と静かなホテル】


※「A24の知られざる映画たち」上映作品




いやぁ、本作の物語の展開の"引き出し方"や"撮り方"に度肝を抜かれてしまった。
"ティルダ・スウィントン"が本作の中で"一人二役"を買って出た意味が分かったし、劇中の舞台である"ホテル"の中が異様に"客やスタッフが少なかった"理由も分かってしまった時、自然と涙が溢れそうになってしまった。
最初はホラーやサスペンスを想像した出だしで、実際もホテルの雰囲気といい、主人公である映画監督の"ジュリー"の異常な"母への執着"もとてつもなく引くぐらい怖かったのだが、ラストになってその怖さや異様さの意味を知った途端、本作への私の解釈が一変した。なんて悲しい物語と思った。それと同時に、怖さから"美しさ"に変わり、本作の人間性の切り取り方がとても綺麗で見惚れてしまった。

まさに、「ホラーは怖がらせるだけのものじゃないんだよ?」というのを、私の代わりに人々に教えてくれる私好みの作品だった。これはナメてた。

監督は「スーベニア」シリーズの"ジョアンナ・ホッグ"。なぜこんなにティルダ・スウィントンと組む事ができるのかというと、2人は幼馴染なのだという。なんてすごい幼馴染なんだと思わず感心してしまう。そして本作の製作には「スーベニア」2作に引き継いで、"スコセッシ"がプロデュースに参加している。監督の初期作に感服して、すっかり彼女の虜になってしまったスコセッシは、本作にも製作に参加し、またまたティルダの魅力を引き出す傑作を残したのである。
そういえば、「スーベニア」も"遺されたものの悲しみ"を描いた物語だった…。「スーベニア」と今回の「エターナル・ドーター」…、感じ方はそれぞれあれど、本作も刺さる人にはとことん刺さる稀有な作品である事は間違いない。ジョアンナ・ホッグは、人の悲しみを描く罪な作家だ。

日本では、「スーベニア」はまだパート1しか見れないのだが、まだ未鑑賞の方は、U-NEXTを契約して是非見て見てほしい。

何はともあれ、「エターナル・ドーター」

こいつは非常に好きな作品だった
コマミー

コマミー