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エターナル・ドーターのMCATMのレビュー・感想・評価

エターナル・ドーター(2022年製作の映画)
4.0
母親と訪れたホテル、かつてそこに母が暮らしたというその建物がいかにも不気味で、事前のリクエストも通っておらず、スタッフのやる気もゼロ。というか、なんか全体的に脱力したような不穏な空気が漂っている。そんな中、母と自分の関係そのものを脚本にしたいと意気込む主人公。母が過去を語り始めるたびに、iPhoneの録音ボタンをタップするが、思いがけず不幸な物語が表出すると、そんなはずではなかったと自分を責めておいおいと泣き出してしまう。ティルダ・スウィントンが、主人公の映画監督と、その母親の一人二役を演じていて、『サスペリア』的なトリッキー演出かと思ったら、非常に意義深いキャスティングでびっくりしてしまった。

「エターナル・ドーター」というタイトル自体が、母の娘である自分、そしてその母も「娘」であったというループ構造になっており、それがホテルの螺旋階段のイメージと重なるのだが、この階段が建物の規模に反して無限に続いているようにも見える。正直、あまりに展開が地味過ぎて、途中眠気に襲われてしまったところもあったが、中盤以降、如何にもBBC Filmという重厚な雰囲気のゴシックサスペンスに背筋も伸びた次第。チャーリー・カウフマン『もう終わりにしよう。』とか、『Penda's Fen』のようなゴシックフォークホラーにもテイストが似ている気がする。割とオススメ。
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