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ボーンズ アンド オールのkuuのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
4.0
『ボーンズ アンド オール』
原題 Bones and All.
映倫区分 R18+
製作年 2022年。上映時間 130分。
『君の名前で僕を呼んで』などのティモシー・シャラメとルカ・グァダニーノ監督が再び組んだ純愛ホラー。
人を食べる衝動を抑えられない男女が、その謎を解くために逃避行を繰り広げる。
本作でプロデューサーも務めたティモシーふんする若者と出会う少女を、『WAVES/ウェイブス』などのテイラー・ラッセルが演じるほか、『ブリッジ・オブ・スパイ』などのマーク・ライランスらが共演。

生まれつき人を食べる衝動を抑えられない18歳の少女マレン(テイラー・ラッセル)は、あるとき自分と同じ秘密を抱える若者リー(ティモシー・シャラメ)と出会う。
人を食べてしまうことに悩んできた二人は次第に惹(ひ)かれ合うようになるが、同族は食べないと話す謎の男の存在によって、二人は危険な逃避行へと駆り立てられていく。

何年振りかに帰郷。
友との待ち合わせまでにかなり時間があったし、京都ぶらっぶらっと。
京都の繁華街も変わったなぁ。
寺町にも新京極にも木刀持った学生はいなかった。
京都スカラ座、美松劇場(美松がやってたゲーセン良く行った)、八千代館(エロ専門)なんてなつかしの映画館もなくなってたし、松竹やったかな?があったとこに近代的な映画館があり驚いた。
んで、何やってんのか覗いたら!
待ち合わせ時間までに上映余裕で終わるじゃないかぁと、ティモシー泪。
んで、今暮らす町では上映予定がない『ボーンズ アンド オール』今作品を早速鑑賞開始。

今作品は、カニバリズムを持つ者たちが繰り広げるラブストーリーを宣伝するのは、もちろんのこと売り込むのは至難の業やったと思う。
兎にも角にも、原作を知らず(後で、作家カミーユ・デアンジェリス2016年にアレックス賞を受賞した同名小説が原作と知った)、映画の前提も軽くしか知らなかった小生は、ぶらっと寄った映画、そして、ティモシー・シャラメが主演しているという理由だけで、このロマンティック・ホラー・スリラーを正面から見た。
そう、京都の町とティモシー・シャラメがこの映画に引き寄せたのは間違いない(あちらは全くこちらを知らないけど)。
それと、ルカ・グァダニーノ監督がこのような病的な前提をどう扱うのかに興味があった。
しかし、予告編で見た登場人物の暴力的で救いようのない性格を強調したモンとは全く対照的な、むしろ趣味の良い、搾取的やないトーンが明らかになり始めたときの驚きで一杯になった。
正直、ティモシー・シャラメがご出演してるのもあるが、今作品にはとても気に入る点はある。
しかし、このカニバリズム題材のために薦めるのは非常に気が引ける。
そう、今作品は、人肉を食らうという強迫観念に苦しむ人々を扱っている。
今作品では、カニバリズムは一貫して前面に出てこないが(無いこともないが)、その裏テーマが蔓延しており、それは、そのような苦悩を抱える2人の主人公のためにある。
映像やとスプラッター的な部分があるものの、今作品はカニバリズム映画とは考えていないとグァダニーノはインタビューで語ってた。
あくまでも、今作品のカニバリズムはメタファーに過ぎない。
これは自分で制御できない事柄に直面した者の物語であり、それによって彼らは人々に偏見や恐怖を植えつけ、社会からさらに疎外されることになる。
それは多くの者にとって、共感できる要素なのではないでしょうか。
僕はこの映画にファンタジックな要素を持ち込むことなく、俳優にできる限りリアルに演じて欲しかったのです。
人々が彼らの存在を信じられるように』
なんか、高尚なんがベースにあり映画製作をしたんやと観たあとでは言葉が納得出来る。
今作品では、ティモシー演じるリーとテイラー・ラッセル演じるマレンは、不幸にも生まれつき同胞動物界脊椎動物門哺乳網霊長目ヒト科ヒト属ホモサピエンスを食べたいという欲求を持っており、映画ではそれを恥ずかしげもなく実行する。食用にするために新鮮な肉を殺すにせよ、肉を食らうために誰かが自然死するのを待つにせよ、今作品は登場人物の不自然な欠点を描くことを恐れていないようでした。
しかし、この戦略的な決断は、今作品の登場人物をさらに人間らしくし、ロマンスとプロットに重層性を持たせることに成功してると思います。
人を食べる人間の映画なんか、気持ち悪りぃと思うかもしれないけど、演技と演出が、並みの映画監督や俳優では達成できないような共感を与えてくれるから不思議。
もちのろん、歯が人間の皮膚を切り裂くシーンもありますが、その合間に、自分たちを受け入れも理解もしない世界で自分の居場所を見つけようとする2人の若者の、衝撃的でロマンチックな青春ロードトリップ物語を見ることができる。
柄にもなく小生は青臭い青春映画が大好きやし、今作品を好きになる素地があったのかもしれません。
しかし、今作品は、ホラー・スリラーのファンだけでなく、多くの人を魅了するものだと心から思いたい。
演技が素晴らしいのは、この映画が誇るスターパワーで云うまでもないが、ルカ・グァダニーノが監督を務めていることから多くの方が期待していることでしょう。
トレント・レズナー&アティカス・ロスがスコアを担当したことで、おそらくサウンドトラックが多幸感に満ちたものであることを想定している。しかし、これらすべてが、今作品が優れている重要な理由なのだから。
演出と撮影は控えめながらゴージャスでしたし、時に不気味やけど美しい音楽と相まって、映像と音響の両方が演技を引き立て、ほとんどの場合、非常に繊細で甘いロマンスに没頭することができました。
今作品は奇妙な催眠術のようなもので、目的地に着くまで時間をかけることを恐れてない。
このゆっくりとした燃焼とすべての恋愛の要素を楽しみましたが、その両方が、避けられない暴力をより衝撃的にするのに役立ちました。
これが嵌まったポイントやったんかな。
そして、主人公たちが愛の穴に深く落ちていくにつれて、自分も落ちていくのがわかった。
それは、今作品を見るために観客席に座っていたときには予想もしなかった。
否定的な点はもちろんある。
2時間11分という上映時間から、今作品は観客をその前提になじませてくれると思うが、その代わりに、非常に速いテンポのオープニングで、登場人物が呪われている特定の性癖をすぐに設定し、深いところへ飛び込んでいく。
この映画の登場人物に肉付けする時間を与えるような、ゆっくりとした導入部の方がよかったと思う。
このような速いペースのオープニングの必要性は、賛成はしないものの、理解はできるかな。
そして、今作品全体に共通することなんやけど、ロマンスも急ぎすぎていて、鑑賞の妨げになりかねなかった。
幸い、ティモシーとテイラーは巧みな俳優やし、映画がその設定にベストな仕事をしていなかったとしても、彼らの愛に納得できた(シモシー贔屓も加えて)。
台詞も特別なものではなく、多くの台詞が素人臭く、子供っぽいと感じたのも否めないかな。
最後に、クライマックスは盛り上がるものの、急ぎすぎだと感じました。
結論に向かって突っ走る前に、登場人物たちと過ごす時間をもっととってほしかった。
とは云え、観たあとの高ぶりがのこってんのか、かなり嵌まりました。
今作品のストーリーは万人向けではないかもしれないが、あえてリスクを冒すシュールなインディーズ・ロマンス映画のファンにはたまらない作品やし、ティモシーをキャスティングしてまで万人に見せたいメタファーが監督には確りあるってのは伝わりました。こ
観た多くの人がショックを受け、また気分を害する方も居るやもしれませんが、あえて云えば今作品の前提を越えて、今作品が本当に素敵なロマンスであることだけに目を向けたら幾分かは楽になるんじゃないかなぁ。
個人的に青春映画、特に青春ロマンス映画は好きなので、特にそのユニークなホラー・スピリットは最高でした。
俳優や女優がそれぞれの役を見事に演じ、豪華な演出と音楽が私の目と耳をスクリーンに釘付けにしてくれました。
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