このレビューはネタバレを含みます
序盤の指を食いちぎるシーンは予告で観ていたので分かっていたけれど、あのシーンを序盤に持ってくる事で、その後のキスシーンや接近都度、別の意味でドキドキしてしまった。あれだけスリリングなキスシーンを描けることに本当に感動したし、サリーの怪演も本当に素晴らしかった。
同族の間でも、当然それぞれ別個の価値観があって、でも文明社会的にカニバリズムはイリーガルなので、マイノリティ中のマイノリティ、“孤独”なのは共通している。
劇中マレンの台詞で「こんなのが60年、70年続くなんて耐えられない」とあったけれど、その数十年を独り生き抜いたのがサリー。
サリーの狂気は、勿論意識せざるを得ないけれど、彼こそ誰よりも“孤独”だったんだと思うと、ストーカーの気持ち悪さやラストの怪演にも複雑な人間味が見えてくる。
「なんで自分の事を名前で?」とマレンが観客の気持ちを代弁するかのように聞いてくれるけれど、孤独だったんだろうし、教育とは無縁で未発達な境遇があったんだろうか、等々色々考えてしまった。それでも、気持ち悪さの極地であるのには変わりなく、役者として100点満点でした。
一緒にいるラストカットでエンドロールだけど、アレは食べたことで一心一体になってる的な事なんだろうか?
途中出てくる地元のヤンキー2人組に絡まれたかと思いきや、怖がらせ担当イカれサイコ野郎は必要だったのかね。母との再会や、愛と食べ尽くすを結びつけるセリフだったり。解読できていない点があまりに多い。
配信されたら答え合わせ的に見返したい作品だったし、カニバリズムのスリラー×ロマンスという挑戦的な世界観をここまで体現したことに感激。