ささ

ボーンズ アンド オールのささのネタバレレビュー・内容・結末

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ファーストカットの絵が彼女の旅の終着点として描かれてたと思う。
そして学校の校内、生徒たち。主人公の彼女はそのどこにも居なくて、微かなピアノの伴奏として登場する。
多数の空席の座席に対して1人ステージの上のピアノ椅子に座る彼女は孤独でありながら主人公そのものだった。

学校や病棟などのレンガ造りの建物も印象的で、ピアノや叫びを閉じ込め、外には聞こえない。固く秘密を抑え込む様だった。

主人公の父親は時間に縛られているようだった。門限や時計にテープレコーダー。娘の成人の誕生日まで育てた父親のルールや苦しみを感じる。

渇きと潤いとルールと道筋。
サリーの「血が渇いた時に君が傍にいた」というセリフがある。サリーが主人公を付きまとう理由になってるセリフ。
主人公とリーの出会いの時も主人公の爪の血が渇いていた。
主人公が迷っている時、雨や水溜まりが出てくる。そして次の目標が定まっていたと思う。

人生において目標を持ち、その中で自分ルールを決め進もうとするのはよくあることだと思う。その時は満ち足り活力のある状態だろう。
でも、その活力は時が過ぎ、新たな出会いの中で枯れてまた迷うこともあると感じた。

そして、また唐突に岐路に立ち新たな道筋を進んでいくと思った。知らず知らずに決めつけたルールも破って。

主人公は直感を大切にしていた。誰かがそうだからではなく自分で決断する強い意志を感じた。
この物語の強い筋になってると思う。

人がこれまで生きてきた、そして、これから生きていく中での行いが全て善行だけではないと思う。
何に罪の意思をもつかは人それぞれだけど、その重みに耐えかねて自暴自棄や死を選ぶ人もいると思う。

主人公とリーはお互いを「いい人そう」と言い合う。

自分がどうしようもなくダメだと思った時、親しい人からの自分の良い面を信じた言葉がどれだけ救いになるか。
自分の思う良い道に引き戻されるような感覚になる。
終着点の原っぱでリーが自身の過去を打ち明ける時、その引き戻される感覚を思い出した。

苦しみを支えられる。寄り添い和らげられるのは不確かな信頼だと思った。

この物語は2人の男性の終わりがえがかれている。
帽子をかぶって登場する2人は不思議の国のアリスの帽子屋さんやネバーランドのピーターパンの様な同族の世界の奇妙さを引き立てていた。

サリーはこの奇妙な世界に戸惑う主人公にとっては頼りになると観ていて感じたし、師弟関係になってもおかしくないと思った。
でも、食後の彼は余りに老いや孤独感が溢れ、ハエを気にとめないカニバの日常に違和感なくどっぷり浸かっていた。それは主人公にとって不安な面だったと思う。

対してリーは若く、家族を思い、舐められないように強がっていた。

リーと主人公の物語がメインだが、サリーの悲劇の物語でもある。

最後、リーを食べる場面で映されるモノはサリーの歴史を語る品々だった。
リーには主人公がいたが、サリーは1人孤独に死んでいった。
あの品々を映したのはサリーへの追悼の様にも感じた。

もしかしたらサリーを選んだ人生だってあったのかもしれない。
ささ

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