現代社会に生きる食人族の夢物語。麗しき良作でございました。（恋愛ホラー映画として紹介されているけど、本作は果たしてホラーなのか）
主人公マレンの葛藤が観ているこちら側にも伝わってくる。長い逃避行の末に待ち受けていた衝撃的な真実。人生はまるでジェットコースター。彼女が解放される日は果たして来るのか。
マレンの同族リーを演じたティモシー・シャラメの才能が、本作で華麗に開花したような気がする。彼はただのイケメン俳優ではない。芝居でも人を惹きつける魅力を兼ね備えた実に狡い男と化してしまった。
サントラも素晴らしい。80年代を裏で支えた代表曲の数々に終始酔いしれっ放し。特にNew Orderの「Your Silent Face」が流れた瞬間思わず涙腺が緩んでしまった。曲を流すタイミングと映像が見事にシンクロしているのだ。センスの塊である。
ルカ・グァダニーノ監督にはやはり脱帽してしまう。目を背けたくなる衝撃的でグロテスクなシーンや、思わず下半身が反応してしまうエロティックなシーンも、彼の手にかかれば全て印象派の風景画のような美しい映像に仕上がってしまう。そして作品全体に漂う心地の良い悲哀で憂鬱なそよ風。彼にしか表現出来ない一種の技であろう。
肝心なサリーについてはここでは触れない。何故かは観ればわかります。触れないというか、触れたくありません（笑）
