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ボーンズ アンド オールのmizukiのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
3.9
"人を食べなければ生きていけない種族"の彼らを拒絶することができないのは、現実の中にいる自分と重なるからだと思う。何が生きる糧、エネルギー、モチベーションになるかは、人それぞれ違う。タブーだとされていることだろうが、それが自然の摂理なのだから。

カニバリズムをよく描く、村田沙耶香さんの小説を思い出した(『変半身(かわりみ)』など短編長編含め、2〜3話は人肉食テーマのものを読んだ覚えがある)。常識があるからタブーがあり、そのどちらも、存在するのは"ただみんなが信じているから"なんだよと。不確実なものが確固たる理由みたいにそこにあり、常識もタブーも語られる。絶対正しいこと、みたいに。禁忌の代表、カニバリズムだって、タブーだったらひっくり返すことができるよね?という実験を物語の中で何度も繰り広げてくれる、沙也加さん。ダメだって押さえつけるほど人はやりたくなってしまうなら、あえて「人食ってもいいんじゃない?」と言ってしまおう、と書いているかのよう。この作品も、沙也加さんの作品も、世界の偏った正しい=揺らがなくていい正しいを、物語の中だけでも中和して、「やっぱり我々の常識(人は殺しちゃいけない、人は食べてはいけない)は人々が一緒に幸福をもって生活していく上で結構正しいんだよ」って言ってくれてるのだと思う。論理の中の可能性としてはカニバリズムはアリだけど、願望としてはナシみたいな、それは矛盾でもなんでもなく、全て筋が通ったことなんだよね。
その素直さが、私には心地よかった。皮や肉を食いちぎるシーンはグロすぎてみてられなかったけど。生前大事にしていた人の肉を食べる風習も存在するみたいで、違う切り口でその辺も描かれていたのは良かった気がした。

ティモシーシャラメを拝みたくてみたけど、案の定超良かった…。赤髪も似合う。ビリビリのジーンズかわいいいい
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