不在

ボーンズ アンド オールの不在のレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
3.6
マレンやリーのような人達にとって人を食べるという行為は、れっきとした欲求だ。
本能に基づいた、睡眠や性欲と同列の、第四の欲求なのだ。
野生の動物にはない、人間だけが持ち得る感覚とも言えるだろう。
彼女達の言う空腹とは、一般的なそれとは全く異なっている。
その衝動はいつどこからやって来て、何故人を食べない限り満たされないのか。
それは食人によってその人の人生ごと飲み込み、孤独を埋める為なのだろう。
その点で彼女らの食人欲求は、食欲ではなく性欲に最も近い。
マレン達は生まれた瞬間から、ずっと空腹なのだ。

野生の世界には存在しない社会という枠組みの中で、孤独を感じながら、寄り添い合う。
彼女達はただ普通の人とは違う感覚を持っているだけで、我々と同じように生きているのだ。
いわゆる"一般的な人間"にとって、マレン達の気持ちは理解し難いものだろう。
だが理解しようとする事は出来るはずだ。
確かに罪の上で成り立つ行為ではあるが、法律で裁く前に、人間らしく感情によって、彼女達の行いをしっかりと見つめてほしい。
不在

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