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ボーンズ アンド オールのsuguruのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
4.0
あるべきだった居場所を失い、
自分自身が認められない世界で
自己肯定すら危うく。
もどかしくも彷徨う十代の少年少女を描いたロマンス。

「人食する」という嗜みなんかではなくて、「人を食べずにはいられない」のだから
異能者でも化け物でもないし、極フツーの人にみえても、人を捕食する本作の“同種”は人ではないのかもしれない。
美しい自然を背景に二人のかわいらしい会話と、彼らの捕食シーンとが、代る代る繰り返されるので先行イメージが混乱させられた結果、「やはり」そう思わせる。

主人公の少女マレンの母親が歩んだ末路、恐らく同種の先人が受けたであろう迫害にクィアの抽象が沈殿して見えます。
同種の大人達と出会って
この飢えと渇きはこの生涯充たされないと知った時に二人は、本能でお互いの愛情を表現してしまいました。

カニバリズムを主題にしたスプラッターホラーなので、レイティングR-18なシーンが多めですが、
リー役のティモシー・シャラメの影のある美しさと、一見して只者ではないオーラを纏ったサリバン役のマーク・ライランスの計り知れない恐ろしさが際立っているのと、
ロードムービーらしく
バージニア、メリーランド、オハイオ、インディアナ、ケンタッキー、ミネソタ、ミシガン、二人が旅した各々の空撮や風景に
若い二人が溶け込んでいるのがとても自然で大変美しく、
最後にこの映画で印象に残っていたのはこれらの景観でした。
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