KnightsofOdessa

アテナのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

アテナ(2022年製作の映画)
3.5
[『レ・ミゼラブル』のその後…] 70点

2022年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。脚本にラジ・リが参加しているということもあって、いきなり『レ・ミゼラブル』の続きみたいな場面から始まる(同作に出演したアクセル・マネンティも出演)。悪徳警官によって弟を殺された兄の一人カリムが、大量の住民を引き連れて警察署を襲撃する様を10分近い長回しで描いているのだ。『レ・ミゼラブル』を釜山で観たあの日の会場の熱気を思い出した。カリムが警察署から奪取した武器などを持って戻ってきた団地は要塞化され、すぐに東西南北各方向から警察に攻城戦を仕掛けられているが、団地の中にいる人々も一枚岩ではなく、怒れる若者たちよりも上の世代は困り果てており、カリムの次兄アブデル(冒頭で登場した落下傘兵の男)が代表して彼を説得することになる。また、長兄モクタールはこんなときでも自分の商品であるコカインを守ろうと四苦八苦している。この手の作品にありがちな、実に分かりやすい人物配置だ。

しかし残念ながら、映画は冒頭以降も馬鹿の一つ覚えのように長回しを使い続ける。長回しは確かに没入感や臨場感を煽る反面、意図しないゲーム性やエンタメ性が強く出てしまうので加減を誤ると自滅する劇物である。本作品の長回しは、面白さ優先のために問題をひたすら単純化して二項対立的な閉所戦闘に落とし込んでおり、矮小化しているように感じる。なんだかんだ面白く観ちゃったし、『レ・ミゼラブル』を釜山で観た時と同様に、どこかデカい映画館で観たなら、私もこの熱気に圧されていたかもしれない。配信で観て良かった。
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