すごい映画!
「三丁目が戦争です」と言う筒井康隆の小説があったが、フランスの団地が戦場になる。
冒頭から画面に引き込まれる。
カメラが常に動いている。
そこには思考をはさむ余地はない。
あるのは怒りと混乱。
カメラは手持ちで歩いているのかと思ったらそのままドローンのように浮き上がる。
まるで魔法だ。
ストーリーは警官の暴力により13歳の少年が死ぬ。
その兄カリムは怒りに任せて過激に反応する。
さらにその兄のフランス軍の軍人でもあるアブデルはカリムを説得しようとする。
敵対する兄弟。カリムは警官に殺され…アブデルは深く悲しみそして怒る。
兄弟役の圧倒的な演技は本当に演技なのかと感じた。
サッカーフランス代表の中に混じってもおかしくない風貌。兄はアンカー弟はストライカー。
久しぶりに画期的な映画を観た。
移民問題という社会問題、兄弟愛、家族愛という普遍的な愛。
カメラ、演出、演技、役者、音楽、音響全てが作品を作るためのエネルギーで繋がっている。そんな素晴らしい映画のひとつだと思う。
4点代後半をつけるのは久しぶりだ。
そしてそんな作品に出会えて嬉しい。
メイキングのドキュメンタリーもえいがになっている。
こういう画期的な作品には必要だろう。
右翼や軍隊を使って混乱を引き起こし政府にダメージを与えるのはアメリカがウクライナやパキスタンで取ったのと同じ方法。
この映画は絵空事だけではない。
怒りは思考を中断させる。
「弟が殺されたんだぞ!!」この被害者意識のエネルギーは怒りと破壊を引き寄せる。