かんやん

アテナのかんやんのレビュー・感想・評価

アテナ(2022年製作の映画)
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オープニング、計算され尽くした長回しのカメラワークにより、観る者も否応なしに暴動に巻き込まれてゆく。

白煙が棚引き、火花の散る機動隊と暴徒の衝突シーンの息を呑む様式美。これこそスペクタル。

団地が中世の城塞となり(梯子を使って機動隊が塀を乗り越え侵入するのである)、若きリーダーはキリストの受難を思わせ、兄との葛藤はドストエフスキーばりであり、まるでギリシャ悲劇のような人知を超えた運命を感じさせる。

古代ギリシャ劇のコロスを思わせる音楽。

監督はコスタ・ガヴラスの息子か、映画の演出の才も遺伝するのか。

疲れ切って、摩滅したおっさんの感性が、久々に役者たちの演技に震えた。

……観た直後だったら、間違いなく、興奮のままにこんな風に書いたはずだ。
かんやん

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