コーディー

サントメール ある被告のコーディーのレビュー・感想・評価

サントメール ある被告(2022年製作の映画)
4.2
生後15ヶ月の娘を海に置き去りにした被告ロランスの罪の所在、と言うより精神の所在。法廷にいる誰もが一向に動機を掴めない中、傍聴席から視線を送る作家であり同じアフリカ系女性ラマだけがその心の深淵を覗いていた。裁きでははなく思慮深く関われば自ずと…とても好き!

早い段階で事件を紐解く物語ではないと分かるし、恵まれている様で何やら落ち着かないラマの視点、その孤独や違和感が傍聴を通して顕在化する様な。そしてひたすら長回しでロランスの独白を捉えるカメラがゆっくりとその無関係ではない恐れや悲しみに焦点を当てる…
教養があっても移民として2つの文化に縛られ自己を確立できぬまま孤立する。ロランスの夫の証言とかその最たるものだったし、母と娘の関係など彷徨うアイデンティティを様々な側面を通して見つめてるので正直、難易度は高かったけど引き込まれた!

実際に起こった事件で2016年に開かれた裁判の傍聴にも通ったディオップ監督。そんな〝わからない〟に魅せられた想いが深く深く物語にも流れている様な、とても独創的な映画だったし裁判記録を使用した台詞の全然ドラマチックじゃない曖昧さwなのに浸透してくる,あまり経験した事ない独特な感覚でした。