nickita0603

サントメール ある被告のnickita0603のネタバレレビュー・内容・結末

サントメール ある被告(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

通り雨をしのごうと、ふと思い立って入った映画。人種に対する偏見が強いフランスで、アフリカ出身の黒人女性が私生児を産み、殺害した裁判の法廷劇。

誰の手も借りず産み落とし、出生届も出さず、2年後、海に置き去りにした。子種は白人の老人。実父は不在。実母は呪術を信じており、娘にとってはコミュニケーションがとりづらい存在。
同じ目線に立ち相談にのってくれる相手が身の回りにいない状態。

妊娠していることから、自らと重ね合わせてしまう、傍聴人である主人公。フランス生まれの、こちらも黒人。
被告と目が合い微笑まれた瞬間、自分の中に同じ殺人者の要素を見ただろう。

死刑囚を追うドキュメンタリー、カポーティの小説『冷血』を思い出した。

そして私も、オウムの裁判で、被告と目が合い微笑まれた経験がある。
「おまえさんも俺とそう遠くない存在だぜ」
そんなメッセージに思えて、そのときは腰が抜けた。

犯罪とされる行為。それは決して非日常ではない。日常が連らなった先に、時にその地平は現れる。
nickita0603

nickita0603