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サントメール ある被告のhydrangeaのレビュー・感想・評価

サントメール ある被告(2022年製作の映画)
4.0
元凶は、法学から哲学に転部したいと言った娘に仕送りを打ち切った父親だと思う。ロランスは学籍がなくても熱心に聴講に通っていた訳だし、彼女の人生をネガティブな方向に舵を切ったのが、白人でもアカデミック社会でもなく、身内だったという点は重要だ。

白人女性たちの顔の表情の豊かさが印象的だ。裁判官の揺れる表情からはロランスへの同情と共感を感じ取れるし、弁護士はロランス(および女性みんな!)ために戦う決意を漲らせている。
対して黒人のラマの顔は常に険しく、同胞の引き起こした顛末を自分もまた…?という不安を感じさせる。ロランスは最後の場面以外は無表情という表情を保ち、それは白人には分かり得ない内面が渦巻いているからだろう。
ロランスの恋人は老ぼれたクズだし、検事の男は執拗に嫌な発言を繰り返すし、その辺りは意外と分かりやすい構造。

母親と胎児の間で互いに細胞が行き来し、その細胞がその後もずっと定着しているという話は興味深く、母親が子供を私物化したがる所以はここにあるのか?と、思ったりした。
ロランスにとってリリは、死んでも自分の一部として残り続けるから寂しくないんだわ。

友人の外国人男性が「僕って、男だし、白人だし、インテリだし、ブルジョワだし、ポリコレ的には最悪なんだよなぁ」と、自嘲的にいうので、「ほんと、それってイケてないし、超サイアクだね!」と、返しておいた。ー
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