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ホワイト・ノイズのmaのレビュー・感想・評価

ホワイト・ノイズ(2022年製作の映画)
4.2
騒ついていたノア・バームバックの新作、気になって観ました。
断言できることを先に書くようにします。老けドライバーの生え際は間違いなくキュートです。

この映画の中で起こった事件は象徴・モチーフに過ぎないのかもしれないと思いました。
事故や事件は、我々を日常から乖離させる出来事です。

日常化した生活に落とされたもの。
日々過ごしていればなんとなく不安や怪しさを抱くことはありますが、それを明白に捉えることはあまりしません。信頼しているが故にしません。日々見落とすように見過ごしていきます。それが私に馴染んで完全な日常を送っています。
今回の事件はそこに落とされたもののように見えました。白濁したシチューの中に何かをぽちゃんと落とせば中の具が見えるように、破壊や衝撃、それによってできる隙間や歪みから現実という問題が見えてくる様子が生々しくて面白かったです。

人々が好き勝手に色々しているので混沌としているし、あれ問題はそこじゃないのかと裏切りを食らうような進行でもあったけど、観察するように観ると面白いです。台詞や発語する時のニュアンスが淡白で、映画を観慣れた身としては初めは戸惑いますが、リアルを表していました。
夫婦愛のドラマも楽しむことができます。
愛している人より先に死のうか、後に死のうか、どっちの意見が多いのでしょう。私は決められません。決められないままその時が来る。それだけだと思います。

最後に、エンディングもとてもキュート。ぐるぐる考えていたところでこれがコメディだったとハッとします。
人物像は総じて可愛いです。
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