ひのらんげ

蟻の王のひのらんげのレビュー・感想・評価

蟻の王(2022年製作の映画)
2.5
戦うときに重要なのは、殉職せず、怪物にもならないこと。

蟻の研究学者「アルド」は、ナイスミドルの風貌、またその教養の高さや詩、舞台演出など多彩な才能をもち、多くの学生が師事してる。
若者男子の「エットレ」は、めずらしい種の女王蟻(たぶんクロナガアリ。イタリアでは珍しい?)を採取し、アルドに提出してほめられたことをきっかけに陶酔する。

二人の同性愛は問題視され、アルドはエットレに対する教唆であるとして逮捕。エットレは、、、、おぞましい治療を受ける。

二人は引き離され、それぞれ奇異の目にさらされ、そして戦う。

1960年代のイタリア。

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戦うべき相手は、安全圏からものを考える奴ら、であるという。それはそうだとも思うし、でもそれを言われたらもう何も進まないようにも思う。
また、「普通じゃくて、みんなと違う」というマイノリティーを定義する時点でそれは成り立たない、とか言い出したらもう硬直すると思う。
どちらかの視点に立つ、というのはどうしても必要なプロセスだと思った。

平和になれば、平和の中にも今までは気にもしなかったことが問題になるかもしれない。でもそうやって、ずっと、私たちは成り立っている(た)。
「誰か」から見たら取るに足らないこと、強くこだわるべきものではないようなことへの異常な執着が重要だと思う。戦いにはなるけども。

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コンピュータプログラムと違って、完璧じゃなくても成り立つのが人間社会。ここ数百年で産業革命やテクノロジーの進化で利便が増し、すべてのものへの意味付け、コスパが求められるようになってきた。

AIは人類が歩んだ膨大な歴史資料を食べて学習しているという。AIもっと進化してほしい。
うまくいくコミュニティとは?その状態や成り立ちを定義できるか。
人類の英知をうまくまとめ、なにか最適解、またはそのヒントが出てくるといいなぁと。AIがんばれ。

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映画を観終わって、併設のカフェでこれを書いている。
偶然、一匹の蟻がせわしなくテーブルを横切った。こいつも映画を観たのだろうか。
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