こども

光復のこどものレビュー・感想・評価

光復(2021年製作の映画)
-
邦画では類を見ないほどのサディズム。
ほんの、ほんの少しの罪を犯した1人の女性が社会に、悪意によって徹底的に打ちのめされる様子が克明に描かれる。
その描写は凄まじく、地獄の方がまだぬるいんじゃないかと思うほど。

終盤には仏教の宗教観が登場し、圭子はそれに救いを求める 。それと同時に、凄まじい仕打ちを受けた彼女の人生を追体験し、明らかに精神にダメージを受けた鑑賞者である我々も、否応なしに坊主の話に耳を傾けざるをえなくなっている。スクリーン越しに僕らを殴り、いたぶり、蹂躙して、半強制的に映画の中に引き込ませるなんて、あまりに暴力的な手法で笑えてくる。
こんな風に映画の世界に巻き込まれたのは初めてかもしれない。

心が瀕死の私たちは坊主の説く宗教観にいたく感銘を受けるわけであるが、その安らぎを文字通り「ぶった斬って」突如としてシュールの世界に連れて行ってしまうのが、深川監督の愛すべき弄れた感性の成す業というものである。

あれだけ残酷なものを見たのに、エンドロールではどうしてこうも口元が緩む。感情すらも「無常」だからか?
そんな自分も含めて、人間は滑稽な生き物なんだろうな。
こども

こども