ぷに

光復のぷにのネタバレレビュー・内容・結末

光復(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

とても良かった。2022年で1番良かった映画です。深川監督のドラマや映画は何本か観ていたが、舞台挨拶でこういうのが撮りたかったと聞いてとても驚いた。神様のカルテや桜のような僕の恋人とは全くかけはなれているし、白夜行の感じよりも暗く、良い意味で気味が悪いと思った。前情報がほぼ無いまま見に行ったため、初めて介護から途中の不幸続きのシーンまでは少しリアリティがないような違和感を感じる部分があったが(生活保護や介護制度のこと警察や病院のシーンなど)自主制作映画であることを知って全く気にならなくなった。むしろ見終わった今では人の悪意や絶望をデフォルメして描写することで主人公の人生において袋小路にたたされている感じが伝わってとても良かったと思っている。主人公は東京の大学に行き、働いたものの20代後半という若さで実家に戻り、社会と隔絶されてしまう。そのためか、言動や考え方が歳相応よりも少し幼くまた狡さがない純粋さを感じた。し、それを表現出来る脚本も演技もすごいと思った。主演の宮澤美穂さんは本当に綺麗なのに序盤ではやつれていて疲れている感じ、賢治と会って髪を切ってから、中盤以降の演技、ラストでの凛とした美しい横顔全てが雰囲気が違い、すごい女優さんだなと思った。冒頭うろ覚えだけどお母さんにキレて暴力振るってた??って感じだったので結構終始そういう感じなのかなと思っていたが本当に疲れて辛いはずなのにお母さんの嫌なこととか心地いいことを考えた介護をしていてとても泣いてしまったお父さんのことも丁寧にみていたんだなあ…特養〜のくだりもおかあさんといたかったんだね、って思ったし私自身介護の経験があるからわかるが、あーやって何かあった時に大丈夫だよ、って冷静に寄り添ってあげられるのって肉親ならば特に難しいと思う。死んでしまいたい、という時もお母さんが死んだらって言っていたのもとても心に響いた。で、そこからの中盤にかけての地獄。賢治さんは救いに見えたけど実際のところ家族を救済したいというよりエゴで圭子さんを自分の世界に引っ張り出したかっただけなのかな。そもそも下心がなかったら介護を手伝う、っていうのも家族にも言えるはずだし、経験があるとはいえ素人が手伝うより制度の申し込みとかの手伝いをして(やっている描写はあったものの)あとはおまかせとかになるし再会のときにわざわざ結婚のこと聞いて自分のこと言うのも何かあっても歯止め聞かなかったのはお互い様みたいにしたかったのかなみたいな深読みをしてしまった。この作品において人は悪意に満ちていて、一件悪そうに見えない人とか、賢治さんみたいに自覚がないことを含めクライマックスまでは本当に地獄のような映画だった。この映画がすごいと思ったのはわかりやすい悪意や前記した主人公の追い詰められている描写が生きすぎていて観客(少なくとも私は)の感情移入具合が半端では無いところだと思う。冒頭の市役所職員が圭子さんを諭す所では何を言ってるのか全く頭に入ってこないのにお寺での住職様のお話はとても難しく1度では理解し難い話なのに私はとても救われた気分になって泣いてしまった。あと心に残ったのが恵子さんに対する非道の数々の描写(警察や、弁護人、検事、女性裁判官の態度、レイプや病院でのいじわる、家への嫌がらせ)等は割と雑な描写に感じたというか登場人物がただやっているだけ、台本にあるだけのような感じがしたのだが(というか文脈関係ないですがあそこで女性裁判官にしてあのような態度にしたというところがこの映画として最高すぎでした)、お寺でのお世話をしてくれる人(以下公式サイトにあったので寺男さん)の演技が本当に丁寧で圭子さんのことを思ったらそうなるよね、そうだよね、トイレするのに上着は邪魔だよねとか茶器は持たせて上げないとだよねみたいな細やかな動きに主人公への救いを感じられてとても良かった。ここで初めて本当の思いやりのようなものに触れられたのかな。私はこの支離滅裂な感想を吐き出すのに2日かかったが、未だにこの作品のタイトル、テーマとラストについては思い悩んでいる。舞台挨拶でお見送り、サインをいただいた時にお母さん役のクランシー京子さんが「賢治は来ない方が良かったよねー!!」と明るく仰っていたが本当にその通りだなと笑った。今の私の考えでは賢治は割とエゴイストだから反省してるとかじゃなく圭子に許されたいという気持ちだけだったのかなと思っているがら本当に心の奥から反省していて、助けを求めていたとしたらあのラストになっていただろうかとずっと悩んでいる。ラストシーンの意味はわからないし、監督は答えは自分の中にあるけど言わないと仰っていたが、私もすすんで今は知りたいとは思わないりだが、自分の中で賢治はどうしてあんな行動をしたんだろう、お母さんはどんな気持ちだったんだろう、圭子は幸せなのだろうか、幸せだとして今までの苦しさはなくなったもののしがみついていたものや圭子なりに大切にしていたものがない今本当に幸せに思っているのだろうかなど答えを見つけていきたい、それまで何度も映画館に通いたい映画だと思った。最後に私事だが、私生活で人間関係で悩んでおり、鬱で治療を受けながらも自殺を何度も考えていたときにたまたま観に行こうと思って観た映画であった。映画には何度も心を救われてきたが、こんなに何度も泣いて心が救われたと感じた映画は初めてであった。今この辛い時にこの映画に出会えて本当に良かったと思う。監督、またキャストの皆様には本当に感謝です。素敵な作品をありがとうございました。
めちゃくちゃ蛇足で不謹慎なのですが、旦那が妻のベッドシーンを撮るなんて…みたいな話舞台挨拶で聞いた時某映画監督を思い浮かべて少し笑ってしまった笑
ぷに

ぷに