やんすけ

光復のやんすけのレビュー・感想・評価

光復(2021年製作の映画)
4.3
ある程度の覚悟を決めて映画館に向かったんですが…それでも観ていてキツかったです。それぐらいに情けも容赦も希望もない、まさに「無常」な作品。

まず現状の日本映画界が置かれた状況に対するアンチテーゼを、作品からは強烈に感じさせられます。映画鑑賞が娯楽の王道だった昔と違い、今はその選択肢は数多い時代。その中から映画を選んでもらうには、観客が「楽しく」て「ワクワク」して「スカッと出来る」作品が求められる。結果、興行映画作品はサクセス・ストーリーでありハッピーエンドであり勧善懲悪なものばかりが重宝される。要はせっかくの休日に難解で不条理な作品や、嫌な気分に陥る作品なんか観たくない訳です。映画を「社会問題などを提起するツール」に出来る欧米や「エンターテインメントの中心」に出来るインドなんかとは違い、日本映画はその選択肢が限られてしまっている。自由度は低い。才能ある監督がホントに作りたい作品を作れる環境にあるとは、残念ながらとても思えない。

そこに今作。映画鑑賞後に呆然としてしまう、魂を引き抜かれるような感覚に陥るタイプの作品。自分の映画体験では『エレファントマン』や『楢山節考』や『ジョニーは戦場に行った』や韓国映画の『オアシス』を観た後のような…何とも言えない気分になりました。こういう作品は本当に少ない。そして…おそらく興行的な成功は難しい。それでもこういう魂を抜かれる映画体験を出来る作品を作ってくれたことに深く感謝。ただしあまりにも無常感が強すぎるので「やり過ぎた感じ」があるのは減点。

監督、やりたいことは分かるけど流石にやり過ぎです。…でも、お見事。
やんすけ

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