Jun潤

探偵マリコの生涯で一番悲惨な日のJun潤のレビュー・感想・評価

3.3
2023.07.01

伊藤沙莉×竹野内豊×北村有起哉×内田英治&片山慎三監督・脚本。
ビッグネームなキャスト・スタッフ陣の割に上映規模も大きくないし宣伝もほぼ無し。
果たしてどのような出来栄えでしょうか。

新宿、歌舞伎町。
毎晩常連客で賑わうバー「カールモール」の店員・マリコのもう一つの顔は、店に来る相談者の依頼を解決する探偵。
ある夜にも依頼が舞い込んでくるが、今回の依頼は逃げ出した宇宙人を探し出してほしいという奇妙なものだった。
わずかな手がかりを元に歌舞伎町を駆けるマリコ。
この物語は、マリコの記憶に残る『生涯で一番悲惨な日』を起点にした、歌舞伎町で生きる人々を描く群像劇。

これは良い意味で予告に騙されましたね。
マリコは主人公でも語り部でもなく、むしろ今作の主役は歌舞伎町そのもの。
様々な欲望が入り乱れる町の中で、人々は苦悩し、間違い、人同士は繋がっていく。
そこには善悪も正しいも間違っているも存在せず、ただ人が生きている。
しかしそんな町にも数々のドラマがあり、大きな事件が起きても何事もなかったかのようになんとかなっていく。
そんな日々の経過が描かれているため、決して1日の出来事を描いている作品ではなかったですね。

個人的に今作、どのようにして観ればいいのかを序盤は把握できていませんでした。
宇宙人探しなどのSFが混じった現実的なシュールコメディとして観るのか、それとも各キャラクターが抱えている苦悩や、その先に起こす行動に考えを巡らせればいいのかわからないまま観進めていたので、笑わせにきているところで笑えなかったり、真面目にきているところで笑ってしまったり。
それもまた監督たちの思惑通りなのかもしれませんがね。

今作のキャラクターたちは、何か大きな出来事に対する向き合い方ではなく、むしろそれでは全くキャラを把握することができず、動いている中の細かい表情や所作から推察していくようなもので、上述の通りストーリーは読み解き辛くても、キャラの噛み応えはある程度ありました。

形は様々だったものの、各キャラに共通していたのはやっぱり愛情だったのかなと思います。
とはいえどれも普通のものではなく、相手の命ごと独占したいほどに歪んだものであったり、劣等感ゆえか、強すぎる繋がりゆえか姉妹で1人の男を共有してしまうものなど、いやいや絶対あり得ないときっぱりと否定はできない独特の愛情の形が描かれていました。
その中心には誰よりも重大で凄惨な秘密を過去に共有していたマリコとMASAYAの関係があったことも良かったですね。

マジックミラー号のことを鏡の向こうとか言うんじゃないよ笑っちゃうじゃないか。
Jun潤

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