ミヤザキタケル

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!のミヤザキタケルのレビュー・感想・評価

3.8
現代を生きるティーンエイジャーとしてよみがえった「ミュータント・タートルズ」の新作CGアニメーション。幼少期にアニメやゲームボーイのソフトを楽しんでいた世代としては食いつかずにはいられないコンテンツなのだけど、本作ではその誕生からしっかりと描いてくれているため、ご新規さんでも問題なく入り込める作りになっている。何より、シンプルに面白い作品に仕上がっていた。

基本的なフォーマットはこれまで目にしてきたタートルズと変わらないものの、スマホやSNSを使いこなし、流行りの音楽や映画などにも精通しているまさしく“ティーンエイジャー”なそれぞれのキャラクター付けであったり、彼らがカッコよくも可愛くも見えてしまう今回のアニメーションスタイルであったり、クスッと笑えてしまうユーモアに溢れる描写の数々など、2016年公開の実写版などとは大きく趣きの異なる今回のタートルズ。

自分たちの存在を人間に認めてもらうべく、偶然出会った高校生のエイプリルに力を借り、巷で事件を起こし続けている謎の犯罪者スーパーフライを捕まえてヒーローになろうと、そうすることで人間に良いイメージを持ってもらおうと画策するタートルズたち。人間に理解してもらう。つまり、人間とミュータントが分かり合う道をタートルズたちは模索する。が、他のミュータントたちは「人間は敵だ」と言う。分かり合うことなどできないから根絶やしにしようと考える。そう、物語の根底にあるものは、人種差別や偏見や戦争の道理と何ら変わらず、僕たちが生きるこの現実に根差したものであった。無論、そんな重々しいテーマを前面に押し出しているわけでもなく、表面的には楽しくてワクワクできて子どもも楽しむことができる作りになっているのだが、物語の根っこにあるものが信用できるからこそ安心して見ていられるし、大人が見ても十分に楽しむことができてしまう。

世代的に「ミュータント・タートルズ」と無縁であるため本作をスルーしようとしている方には、騙されたと思って是非触れてみていただきたい。そして、「ミュータント・タートルズ」と聞いてビビッとくるものがある世代の方には、今回のタートルズはマストでご覧いただきたい。骨太なドラマを宿した楽しくてハッピーなタートルズがあなたを待っています。