故ラチェットスタンク

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

3.9
『I Say Hey!』

※微ネタバレあるかも〜各人注意して。

 NYを撮る作品は『アベンジャーズ』を筆頭に必然的に魅力を感じるが本作も御多分に洩れず。画面のごった煮感はポストスパイダーバースといった趣きだがより抑制が効いていて見易い。シークエンス毎の編集が丁寧で軸がブレない。白眉は中盤、マッチカットを駆使したシンクロアクション。痺れた。

 物語も「除け者たちの社会への迎合」をキッチリまとめ上げており、手堅い。タートルズ4人と記者志望のエイプリルの成長、ネズミ男とハエ男の親としての対比、市井の人々の変化とそして最後には…という内容を100分で手際良くギッシリと詰め込んでいるのが素晴らしい。導線が分かりやすく、尚且つ全員に見せ場がある。セリフ、シチュエーションの反復がよく効いているし、持って行き方にもキッチリ必然がある。こういう安定してずっと面白い作品は久々に観た。「暴力への訴えは良くない」と要点はシンプルだがアニメーションのフットワークの軽さにはこれぐらいが丁度良い。

 見せ場の組み立ての手練手管ぶりに度肝を抜かれる。『スパイダーバース』的極彩色に始まって、往年のアジアン・カンフー・アクションの名作を経由し、『ミッチェル家〜』的ポップカルチャーリファレンスを挟みながら、『アベンジャーズ』的作戦会議、『パシフィック・リム』的大怪獣討伐作戦、そしてさらにその先へ…と飛躍を重ねて行く大盤振る舞いが小気味良い。サントラも使い捨てず一曲一曲のトリートメントが丁寧で好印象。飛躍の中でもとりわけ素晴らしかったのはあの飛躍だ。政治性を持たない彼らないし彼女らの、同じように政治性を持たない個人たちとの交わり、市井の私人としての交わりが凄まじく痛快だった。件のバトンリレー、感服です。

 しかし、ぶっちゃけタートルズ4人の見分けはどうにも付かず、画面がガビガビなのでバンダナの色の違いすらよく分からない。4人がバタバタと喋り出すコメディ場面(そのくだりは全部可愛くて好きだったけど)のせいで4人で1人みたいな見せ方になっているきらいまであって、もう少しチーム戦のグルーヴでアガりたかったというのは正直なところ。こう言う映画あるあるの「あ、そんなアッサリなんだ」展開は多く、99分にしては体感120分ぐらいな気がしたり(これは体調の問題もある)、『エンドゲーム』を筆頭とするリファレンスが口説く思ったりと事程左様の不満はあれど、全面的に満足。続編もどうぞどうぞと言う感じ。イイもん観たな。

追伸:ジョン・シナ誰だったのか全然分からなかった。