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ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!の06のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

大泣きしてしまった。
前半は「ハイハイ、スパイダー・バース系の映像がやりたいだけの娯楽的ハイテンションムービーね」と半ばがっかりしながら観てたのだが、後半はもう涙腺ガバガバだった。

タートルズ達の「普通のティーンエイジャーとして彼らが住むニューヨークのみんなに愛され受け入れられたい」というのは、割と古来から苛められっ子やオタク達が抱く夢である。この葛藤に新鮮味はない。ヒロインであるあんまり魅力的でないナードな少女が、タートルズに共感する事でもそれは語られる。

だが後半。
タートルズ達はミュータント化した敵の大群と遭遇して説得を試みる。すると敵の配下たちはすぐに掌を返してボスに反旗を翻すのだ。
ここに僕はロシアの姿を見た。

フライは言う。「自分が家族を守ってきた」「居場所を守るためには、他者を制圧しなければならない」「自分に黙って従っていればよい」

これはロシアの世情と似ているのではないか?古来より厳しい環境にさらされて来た熊と斧の国ロシアは、そのリーダーに優しい母ではなく、厳格な父を求めた。そして父は皆を守るために強固な姿勢で世界に挑む。
だがウクライナとの戦争が始まってからの、国民感情はどうか?

フライの配下達は言う。「僕らだって、本当はこんなことをしたくないんだ」「もうやめよう」

タートルズの説得一つであまりにも簡単に意見が翻るのに、都合の良さ、物語的な嘘を感じはする。作劇的にはダメダメであろう。でもこの「争いをもう止めたい」という訴えにこそ、物語的矛盾を無下にしてでも伝えたい事が有るのだと僕は感じた。だってミュータント・タートルズは子供向けのアニメだ。そこには大人たちからの、希望を込めたメッセージがあるはずだ。

その後巨大化したフライとの戦いでNYの市民が手を貸してくれるシーンもそうである。
国家や戦争や民族問題など、ニュースで取り沙汰される大きな出来事には我々は無力だ。メディアも人々の分断に大きく寄与している。しかし、一人ひとりから、世の中は変えて行ける。世界の見方をすこし違ったものにすれば。タートルズと市民は、いわば民族の分断だ。だが手を取り合い想いを「つなぐ」事が出来れば、私たちは大きなものに立ち向かう事ができる。それを見事視覚的に表現してくれた。

巨大化から解かれたフライをみんなで再度説得するみたいな作劇にしなかったのは、そこに嘘が有ると感じたからだろう。ロシアの戦争はまだ続く。

とにかく、夢とメッセージが詰まった映画だった。ぜひ子供達に観てほしい。
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