時計じかけの俺ん家

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!の時計じかけの俺ん家のレビュー・感想・評価

4.8
今回のタートルズは一味違う。

今までの実写映画では筋骨隆々で、ある程度成熟した若者として描かれている。しかし今作のタートルズは地上で暮らす人間に憧れ、同じように高校に通って恋をすることなどを夢見ているティーンエイジャーなのだ。マーク・ラファロのハルクや進撃の巨人など触れてるカルチャーも正に現代っ子。具体的に列挙されると解像度も高くなった。

加えて、これまでのタートルズのアニメや映画は主に勧善懲悪をベースに描かれているが今作のヴィランは同じ境遇を持った仲間として色濃く描かれる。どんなミュータントもタートルズからすれば同じ葛藤を持った従兄弟のような存在である。ティーンエイジャーの彼らには社会が性善説のように見えているからであろう。大人になるにつれ忘れてしまう純粋さを思い出させてくれる。

だが、そのそのタートルズの育ての親であるスプリンター先生は「人間は悪魔だ奴らとと関わるべきでない」という性悪説を持つ。
エゴにも似た過保護さではあるが、自分が感じた負の想いを少ない家族のタートルズ達にも感じて欲しくないというのは親心として妥当の感情ではないだろうか。スーパーフライにお前とは違うと飛び掛るシーンにも理由がつけられる。結果として、タートルズを通して同じ境遇のミュータント達に出会い、家族が増え、少し考えが改まったのではないかなと感じた。
スプリンター先生が捕まったタートルズを助けに来るシーンでは剣、ヌンチャクや棒など4人の武器を使って奮闘する姿が、この人は彼らの親だったと思い出させてくれる。

結末には1度は戦ったミュータント達と共闘して、ラストシーンには仲睦まじく過ごすシーンが描かれとてもポカポカした。全編通してとても優しい映画だった。

今作のアニメーションはクレイアニメのような、落書きタッチのようなタートルズだ。幼い頃の4人も顔や体型をここまで細かく書き分けられていたのは本作が初めてでないだろうか?

また社会的なマイノリティを描き、伝える映画としても完成度が高い。無駄に説教臭くなく、凹凸の飛び出た個性を持った他者との共存は''行い''で示される面もあるのではなかろうか。

もし続編があるのであればシュレッダーやフット軍団とどう交わるのか、まだまだ目が離せないシリーズだ。