今や源泉かけ流しをPRする温泉が主流で、温泉じゃない銭湯は人気がない。
だが、そもそも「湯道」という教えがあり、湯に浸ることにこそ道は開かれる。
本作は、そこに着目した非常にユニークな発想で充たされている。
井戸水から組み上げる銭湯を運営する兄弟。だが、御多分にもれず、廃業の危機が迫っている。
時代の遺物か伝統の継承か。
二者択一の中、揺れ動く人間模様が丁寧に描かれている。
銭湯は人間の触れ合う場所。日帰り温泉にはない、情愛があふれる空間に、切り捨てるのは簡単だけどという思いが巡ってくる。
「湯堂」提唱者で、wowwowでおなじみの小山薫堂が脚本を手掛けている。
時代の流れとともに、めっきり減ってきた銭湯へのオマージュ的作品。