ひろるーく

ちひろさんのひろるーくのレビュー・感想・評価

ちひろさん(2023年製作の映画)
4.1
日常ファンタジーの鬼才、今泉力哉監督の作品。
Netflixで劇場と同日に公開されると聞いて、iPhoneのカレンダーに予約してから何日たったことでしょう。

ちひろさんに会えるこの日を本当に待ち遠しく思っていました。
とかいうと、風俗のお嬢の予約みたいだけど、ちがいます。
あ、同じか笑 同じです。

僕は原作の漫画を読んでいないので、まったく映画だけの感想になります。

ちひろさんは自由で元気でかわいい。そして強い。
海に近い町の、「のこのこ弁当」というかわいい名前の手作りお弁当屋で働くちひろさん。前職は風俗嬢です。

その過去を隠さずこの町で生き、周りの人からも愛される。
浮浪者(鈴木慶一)にお弁当を与えたり、小学生マコトの面倒を見たり。
あと、日々の高校生活と窮屈な家庭に鬱憤をためている女子高生オカジに仲良くされたり。
そして、のこのこ弁当の主人(平田満)の妻で一緒に弁当屋を営んでいた多恵さん(風吹ジュン)が入院している病院に足繁く通ったり。
風俗での元同僚バジ姉(van)、風俗店の店長で今は熱帯魚屋の愛称もそのまま店長(リリー・フランキー)が出てきたり。

ちひろはいつも人とふれあう。そして、みなちひろが好きです。

しかし。
ちひろがふつうに(何がふつうであるかとかは置いといて)生きてきた一人の女性であるはずはなく、なぜ風俗店で働いていたのか、なぜここまで人に優しくなれるのか、なぜちひろは強いのか。ちひろは一体何者なのか…、
が描かれていきます。

そして、ちひろも落ちる日もあれば、語りたくない過去もある。
そんじょそこらの人間よりも背負ってきた過去の重さがちがうのです。

明るい笑顔とネガティブな感情の明暗を有村架純がみごとに演じています。さすがです。素晴らしい。

さみしい気配。
この一言がちひろの存在のすべてです。
もう観ている側は切なくて切なくてたまりません。
きついですね。

同じ星の人間を探し続けるちひろさんは、今日もどこかで誰かに慈しみを分け与え、そしてまた何かを背負いながら生きているのだと思います。
本当に愛おしいです。

傑作だと思います。
すべての方におすすめします。

そうそう、佐久間由衣さんが小学生マコトのお母さん役で出てきます。
有村架純と佐久間由衣といえば、NHK朝の連続ドラマ「ひよっこ」の、みね子と時子です!
お! っと声が出てしまいました。焼きそば旨そう!!
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