りょう

スクロールのりょうのレビュー・感想・評価

スクロール(2023年製作の映画)
3.4
 松岡茉優さんが演じた菜穂は区役所の職員のようで、戸籍窓口にきたカップルに「未成年の結婚には親の同意が必要です」と言っていました。2022年から成人年齢が18歳になり、女性の婚姻開始年齢も18歳になったので、現在は未成年の結婚そのものがなくなっています。それから、未成年のアイドルの自殺がテレビ報道されていましたが、さすがに自殺報道ガイドラインに違反しています。
 法律監修ってほどのレベルでもないし、こういう単純ミスは興醒めです。誰もスタッフなどが気付かなかったのでしょうか。
 自殺をとめられなかったことに悩む描写は、過去に経験があるのでしんどかったです。それを「社会のせい」にすることは簡単ですが、その社会を放置したり傍観していたなら、その社会に加担していたことになります。ただ、それを息子を失った母親に言っていいはずはありません。しかも葬儀の途中に報道機関が…。原作にあったセリフかもしれませんが、このシーンには絶句させられました。
 なんだか悪口ばかりになっていますが、物語そのものは4人の若者の群像劇のようで、チャプターごとに時間軸を交錯させたりして、なかなか面白い演出でした。プロローグで意味のわからないシュールな映像がワンカットで延々と…、ずっとこのままだったらどうしようというレベルでしたが、普通の日常生活を描く物語になって安心しました。
 あまり劇的なできごともなく、スローなテンポでセリフも少なめです。そんな演出に賛否あると思いますが、松岡茉優さんと古川琴音さんの自然な演技が心地いい展開にしてくれました。ユウスケは女性たちを苦しめているだけでアウトですが、いつも無気力で主体性がない“僕”は、それが彼の個性なら、“生きがい”なんかなくても、“生きる価値”はあるはずです。
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