MasaichiYaguchi

戦地で生まれた奇跡のレバノンワインのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
戦争という過酷な状況下でもワインを造り続けてきた11のワイナリーの人々が、その人生哲学や幸福に生きる秘訣を語るドキュメンタリーは、レバノンワインに魅せられた「食べて、祈って、恋をして」の著者エリザベス・ギルバートや、ワイン界の著名人ジャンシス・ロビンソンらのインタビューと共に、我々を魅惑のレバノンワインの世界へ導く。
主に登場するのは、世界的に高い評価を受けているシャトー・ミュザールの2代目で「レバノンワインの父」と評されているセルジュ・ホシャール、戦争ではなく平和をもたらすために内戦中にワイン造りを始めた修道院の神父や、虐殺が起こった故郷の村で村の再起のためにワイナリーを続ける夫婦など不屈のワインメーカーたち。
度重なる戦争に翻弄されてきたレバノンだが、実は知られざる世界最古のワイン産地の一つで、その起源は5千年前とも一説には7千年前ともされることを、本作を通して初めて知った。
映画では、内戦をはじめとした戦闘でワイナリーが破壊されたり、収穫に支障が起きたり、道や橋が破壊されたことによる運搬での苦労がリアルに映し出される。
それでも戦時下のワインメーカーたちは、毎日を可能な限りいい日にする為、極限状況でもワインを造り続ける。
このドキュメンタリーを観るまで、レバノンワインの味はおろか、その存在も知らなかった私だが、お店やレストランで見付けたら試してみたい。