ゆかちん

ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマンのゆかちんのレビュー・感想・評価

2.9
アントマン3で征服者カーンを観たので、カーン演じたジョナサン・メジャーズの他の役を観ようとなりまして。。

トップガンみたいな印象を受けるけど(航空スタントが同じチーム?)、事実をもとにした作品ということで、厳しい現実がヒシヒシと。

黒人差別のしんどさとプレッシャーの重み。
訓練で仲間が呆気なく死んでしまうのも、本当の戦争も恐ろしい。ピリピリした世界。

男同士のブロマンスというところも魅力なんだろうけど、派手な盛り上がりとかエンタメというより、割と淡々と「こういう英雄がいた」ということを記している感じ。

まだまだ黒人が差別されていたときに、アメリカ海軍唯一の黒人パイロットとなり、家族と国と仲間に尽くしたジェシーの物語。
朝鮮戦争というのもあってか、ファルコン&ウィンターソルジャーに出てきた、歴史から消された黒人の超人兵士イザイアのこと思い出した。

彼がいたから今があるんだろうな。
彼がいて、トップガン マーヴェリックのメンバーがいるんだろうなって感じがした。

だからか、私的にはこれを観て盛り上がるっていうより、こういう人がいたんだな、凄いな、と知るための作品となった。
トップガンとはそこが違うかな?
うむ。知れて良かった。



1950年代。アメリカ海軍で唯一の黒人パイロットであるジェシー・ブラウン(ジョナサン・メジャーズ)は、優れた飛行技術を有したベテランだったが、プレッシャーもひとり抱えながら飛んでいた。
そこへ白人のトム・ハドナー(グレン・パウエル)というパイロットが転属してきて、2人は互いを認め合って仲良くなる。
同時期、アメリカは朝鮮戦争が激化したことで、その戦地に戦闘機の部隊を送り込む。ブラウンとハドナーは任務を遂行するために空を駆けるが…。


ネタバレありつつ感想。


いやあ、生半可な覚悟では出来ないことをよくやってきた、凄い人だなぁと。
「指示に従えば死なないのは、白人だけ」
って言葉にゾゾっとした。
危ない指示を出して訓練中の事故ってことにしてしまえば、殺せちゃうんだもんな。。
水泳訓練の時の酷い仕打ちを受けた話も恐ろしかった。
能力を認められるのは白人よりハードルあるだろうし、しかも、味方にも敵がいるという状況の中でって、すごい。
強い覚悟と何クソという強い不屈の精神がないと。。
賢いだけでは、パイロットとしての腕や度胸があるだけでは、あそこまでは行けないんだろうな。。

最初にもあったけど、1人の時、鏡に向かってぶつぶつ自分を罵倒するジェシー。
自分が今まで周りに言われてきた酷い差別発言を鏡の自分に向かって言い、自分を奮い立たせる。
いやいや、メンタル自傷行為ですやん。ツラ。
でも、それで強くなれるなら、いいのかなぁ〜えーしんどいよう。

この鏡に向かって言う時に段々涙を浮かべだす演技がスゲってなった。
ジョナサン・メジャーズすごいな〜。
そして、彼の演技は割と重い方で、なんか迫力があるというか。
MCUロキの「在り続ける者」は口調とか軽快な感じやったけど、それでも重みがあった。
彼の演技が好きっていうコメントよく見かけるのとか、次のMCUメインヴィラン役に選ばれるというのがわかる気がした。

孤高で誰にも頼らず強く立つジェシーのエネルギー源は、家族にもあって。
奥さんや子どもの前の雰囲気がとても柔らかくて良かった。
本当に愛がいっぱいで素敵な家族。

ジェシーの奥さんもすごいよなー。
軍人の妻って、覚悟しとかないとあかんねやろけど。
最後、ハドナーが、ジェシーを死なせてしまったため、奥さんに会うのが怖かったと言うたとき、「それはあなたの仕事ではない。私があなたに頼んだのは、そばにいてあげること。最期を看取ってくれたことで十分」というようなことを言ったとき、うわあああんってなったわ。

そんなジェシーのウィングマンとなり、親友となったハドナー役にグレン・パウエル。
トップガン含め、「能力ありありのイケイケのザ・白人男性」という役の印象があったけど、今作は割と控えめ。
能力ありありなのは一緒だけど、割と物静かで、冷静にじっと観てる感じ。
でも、自分の判断には自信があるって感じかな。
他人を偏見で見ずに、フラットに優しく接するナイスガイでした。
でも、「事実だから」といいながら割とデリカシーないこともしちゃう(報告書とか仲間の訓練中の事故のこととか)。
間違いではないけどさぁ。。。
その点をジェシーに怒られてた。もっと配慮とか必要やろな。
でも、人をフラットに観て、仲間を大事にするところはとても熱くていい。
こういうのもこの役者さん似合うね。

そういえば、ジェシーがハドナーに、「俺のウィングマンになってくれ。海で溺れてるからといって救命用具を投げ込むだけじゃなく、飛び込んで助けに来てくれ。」といってたのが印象的。
差別のこともあって、そうやって信頼できる相手が中々いなかったのだろうなぁ。

その後、ジェシーの戦闘機が故障し不時着した後、なかなか動けないままになった。
放っておく人もいるかもしれないが、ハドナーは自分も不時着してジェシーを助けようとする。
結果、助けることは出来なかったんだけど、ハドナーは、いわゆる救命用具を放り投げるだけにせず、ちゃんと自分も飛び込んで、ジェシーのそばに行ったということにグッときた。

ハドナー、ジェシーに不時着の指示していくのとかめっちゃ冷静やたな。
でも、さすがにジェシーの最期をみてからは落ち込みが凄い感じでした。足を引きずりながら、仲間が弔い飛行にいったのを見送る背中が切なかった。。


うーん。
悲しいけど、ジェシーのような人がいたことはありがたいことなんだろうと思うし、ハドナーとの友情も良かった。
あと、同じチームの人たちも仲良くて信頼できるのもよかった。
でも、家族のもとに返してあげてほしかったな。
でも、観てよかったなって思いました。

あの手紙の言葉が素敵でした。
ゆかちん

ゆかちん