Masato

ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマンのMasatoのレビュー・感想・評価

3.7

朝鮮戦争が間近に迫った1950年、黒人初の海軍飛行士のジェシーブラウンとペアを組むことになったトムハドナーとの熱き絆を描いた戦争ドラマ。実話。

MCUのカーンに大抜擢されたジョナサンメジャーズと本作と似たトップガンM後でノリに乗っているグレン・パウエルの注目株二人が主演を務めた映画ということでキャスト面でかなり注目されていた印象。

戦争映画ならではの派手さはあまりないものの、しっかりとドラマとしてよく出来ていた。ベースは戦争というよりも黒人差別が色濃い1950年代において、まだ一人しか存在しない黒人パイロットの苦悩と葛藤を描いていた。黒人初のパイロットの実話であることや監督の父親がパイロットであることなどで様々な人の想いが込められているので見応えがある。

本人ではなくペアとなる白人パイロットからの視点で描かれるというのは新鮮で良かった。他者から見つめることで当事者以外にもよりリアルな感触で伝わりやすく、かつそこまで押し付けがましさもない。またジェシーブラウンのパーソナルなドラマとしても成立するようなナチュラルな描写で黒人差別問題に疎い人が入門として見るのも良い感じな描き方だった。

また主人公のトムハドナーも社会的弱者と接することの難しさを描いていて良かった。いくら親切心や仲間を助けたいという純粋な行動でも、白人というだけで生まれながらに特権を持ってしまっている故になかなか本意を理解してもらえないし、対する相手も受けてきた差別や屈辱や境遇の差から、見下している、哀れんでいるのかと勘繰ってしまう。この社会的構造からくる齟齬はなんとも言えない。

見る前には想像しなかった差別と歴史のせいで白人と黒人が純粋に互いに真っ直ぐ向き合えるようになるまでの無意味すぎる難しさを描いていて、それは今もなお解決せずに現在にまで脈々と続いている問題でもあって、似たような映画が現代に時点を置いても現実的なものになってしまうことの悔しさを感じさせる。

そして、献身的である(Devotion)ことが人種間の友情の前に立ちはだかる壁を打ち砕く最高の方法であるということを説いてくれる。

映画としてはあまりドラマチックではなく派手ではないのでスペクタクルという観点ではそこまででもなかったが、良い感じの戦闘シーンはあるのでアクションに関しては及第点。

グレン・パウエルは同じ笑顔でもハングマンのときはイヤミな笑顔なのにコッチでは良い人すぎる笑顔ですごいなと思った。
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