Tラモーン

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似ている(2021年製作の映画)
3.7
たった25分なのにじっとりと嫌な気分に。


世界的な広告賞を受賞し一躍有名デザイナーとなった田中(大迫一平)の働く会社に、大学時代の友人である友作(ミネオショウ)が面接に訪れる。そこで友作が見せた学生時代に描いたという絵が、田中の受賞作品に酷似していたことから社内は混乱に陥る。窮地に立たされた田中は上司命令で絵を買い取りに友作の家に向かうが…。


絵の盗作を題材に、人間のエゴや保身といった醜さが浮き彫りになっていく様を描いたブラックなショートムービー。

大手広告デザイン会社に勤め、テレビのインタビューを受けるほどのイケイケデザイナーの田中。
一方、よく言えば芸術家気質だが、悪く言えば世間知らずな売れない画家でデザイナー志望の友作。

つい盗作に手を染めてしまったが故に足元をすくわれドン底に叩き落とされた男の保身と絶望。あれは怖いだろうな。多分たいした悪意もなくバレないと思ってやったんだろうな…。

なによりも怖いのは友作の奥さん。笑顔で田中の前に現れておきながら"全部知ってるんですよ"って。観てるこっちまで胃がキュっとなって冷や汗が出る。

そして1番の当事者友作の無垢さ故の混乱と目の眩み方が観ていてつらくなる。

"俺だけ何も知らなかったってこと??"

人は事態が飲み込めないと攻撃する相手を間違えることがあるんだな…。
田中の会社が得た利益を考えたら100万なんて端金だろうに。息を荒くして作品を掻き集める売れない画家は滑稽にも哀れにも見える。

短編らしい強引なオチではあるけど、田中からしたらもうそうなるよね、と自業自得ではあるものの、うっすら同情してしまうような気もする。

ズルいことしちゃいかんね。
Tラモーン

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