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無法の愛のKentaCのレビュー・感想・評価

無法の愛(2022年製作の映画)
4.0
「いいことをしたいと願う人生を生きたかった」男が、偶然出会った女性との間で育んだひとつの愛の形と、その男の行く末を描いた物語。

カラーコーンを頭から被り片目だけ見える異様な姿の主人公の厭世的な独白から始まり、テンポ良く展開していくややエキセントリックな男女の物語は、
グレースケール+淡いピンクという特徴的な色彩で描かれる味のある作画と共に求心力抜群で、
耳心地の良いジャジーな音楽も相まって、冒頭からこちらを一気にその作品世界に惹き込んでくれました。

更に本編途中、内容ではなく表現手法的な部分でチャレンジングな「ある仕掛け」が施されていて、それ以前以降で作品の見え方というか「こちらへの入ってき方」に違い(空間的広がり)が生まれているのが、ザ・アイディアという感じでとても斬新で新鮮でした。

ストーリーとしては何とも言えない哀愁と悲哀に満ちた物語になっていて、
自分の出自や境遇、そして人生に対するなんとも言えない怒りや哀しみ、虚しさややるせ無さが混在した主人公の辿る道行き、
そしてそこに絡む、世の人々の流されやすさや身勝手さといった現代社会への強烈な皮肉や警鐘…という後半の展開には、
なかなかのメッセージ性があって、
「それでも人生は続いていく…」ことの希望と絶望の両側面を改めて考えさせられました。

自分の場合はTwitterで、本作を手掛けた鈴木監督の呟きがたまたま流れてきて興味が湧いて検索して観てみましたが、
23分と観やすい尺で、YouTubeで観れる作品なので、このレビューを読んだ方は自分と同じようにこういった偶然のきっかけ=作品との出会いだと思って、是非試しに観てみてほしいなと思います。
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