草食

ナナメのろうかの草食のレビュー・感想・評価

ナナメのろうか(2022年製作の映画)
3.4
 「家族」の象徴である「家」で迷子になってしまう……姉妹が進む道を違えてしまったことのメタファーだと解釈したが、色彩のない白黒の世界や、響く強い風の音によって生まれたホラー映画さながらの緊張感が、(少なくともこの瞬間の)別離の深刻さを強調しているように感じられた。
家族といえど他人であるし、そんな複雑な人間関係の顛末を描いているにもかかわらず、どこかすっきりとした繊細な後味(ガラスのコップで冷たい水を飲んだような。)だったのがたいへん印象的だった。

 また姉は冒頭からエプロンをつけているが、エプロンは家庭を持つ主婦であることを表すモチーフとして機能していたのだろうか。中盤、エプロンを脱いでから妹の私生活に言及するシーンは、姉としてではなくひとりの人間(あるいは女性)として妹と対峙しようと歩み寄った姉の切実な心情、そして勇気が、細く落ち着いた声色から伝わってくるような気がしている。
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