しゅん

肉体のしゅんのレビュー・感想・評価

肉体(1932年製作の映画)
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1932年に何故ジョン・フォードは自身のプロダクションで、監督クレジットな抜きでドイツ人を主役にした映画を撮ったのか?当時のアメリカ産でドイツ人は敵役で、アメリカ人が正義なのが常。オーストリアを舞台にした『四人の息子』だって、合衆国は自由の国ってことになってたもんな。本作は真逆で、お人好しで快活なドイツの善人レスラー兼ウェイター、ポラカイ(ウォーレス・ビアリー)がアメリカのヤクザと八百長に苦しめられる話。前半のバーでの気持ちよさは、後半に不可解でねじれたストーリーへと転化する。その不可解さに、国家、あるいはそれに準ずる組織の暴力的介入を考えずにはいられない。

ポラカイを結果的に悲劇に貶めるローラ(カレン・モーリー)の性格と行動が常にギクシャクしているように思える。情夫ニッキー(リカルド・コルテス)へのローラの愛憎をカメラワークで伝える室内シーンなどは素晴らしいシーンだと感じるのだが…。でも、観てから一日経って振り返ると、そのねじれ方が重い力になっているようにも思えてきたな。謎が多くて惹かれる作品なのはたしか。ポラカイが魅力的なのも間違いないし。樽から直接にグラスにビール注ぐところ大好きだったな。

『ジョン・フォード論』読んだ後だと、やっぱりポラカイが部屋にあるあらゆるものを画面外に振り飛ばすシーンが「投げる」の主題として印象に残る。
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