たむランボー怒りの脱出

肉体のたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

肉体(1932年製作の映画)
4.0
ファーストカット、女囚たちが広場で円を描いてゆっくり歩く様子を真俯瞰で写す、この異様な雰囲気は何なのか。何らかの宗教映画を思わせるオープニングではあるが、中身は純情男の悪男悪女騙され譚。
悪女の改心がはっきりと描かれるような嘘っぽさがない。何やら悪女が次第に優しい心を見せるようになっている感じはするという、この曖昧さがずっと続き、見てると愛おしさと憎らしさを代わる代わる感じるようになる。映画は心を撮すことができないが、鉄格子を挟んで男女が手を握り合い「許しを得る」ことによって初めて間接的な改心を写した画面となる。この決定的な舞台装置と行為があってこそ、悪女の曖昧さも消える。
刑務所に始まり刑務所に終わる、宗教的な雰囲気もまたもや立ち上がっている。それにしても今月は『アメリカン・ジゴロ』『スリ』に続いて三本目の「鉄格子越し男女」映画を見た。この鉄格子男女モノが好きだということがはっきりしてきた。万田邦敏『接吻』とか。