しゅん

なのに、千輝くんが甘すぎる。のしゅんのレビュー・感想・評価

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「片想いごっこ」のメモが落ちることで拾う人間との間でドラマが発生し、かつ「片想い」の状態が終わることをモチーフの動きで告げる、この二重の役割がカッコいい。階段/坂を登るの繰り返しで憧れへの道行きを描き、左から右/奥から手前への疾走で二人が重なる。丁寧な演出が施されているおかけで、女性の欲望の発露としての「夢小説」性だけでなく、スターになってしまった人間の恋愛の困難さが感じ取れる映画。千輝くん(高橋恭平)は気づいたら上に行ってしまった人間で、それは両親の確執から逃れるために妹を抱きながら二階でじっとしていた姿に現れているように思う。降りられなくなってしまった人間が、どのように他者と恋愛関係を結べるか。結果的に本作は、「推し」と「恋愛」はどのように調停されるべきかという問いを巡る映画になる。演技は流石に稚拙さが目立つけど、見応えがある。
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