シャチ状球体

私は男でも女でもありませんのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

4.5
Four CornersというTVドキュメンタリーシリーズ(?)の1エピソードとして放映された作品。

履歴書(最近はそうでもないかも)、保険証、公的書類、会員登録の際の情報入力ページ、学校、職場etc……。
全て男女二元論の牢獄。

この作品では、戸籍の性別を変更するのに多大な労力がかかる日本国ではまずありえない(あえてこういう言い方をした。いかに性的マイノリティ、とりわけノンバイナリーやトランスジェンダーにとってこの国が生き辛い環境なのかを強調する意図があった……と筆者は樹洞に向かって囁く)光景がたくさん見られる。
10代から身近な病院で適切な処置を受けられる環境にある人は少数派だと思うのだけれど、12~18か月の待ち時間があるとはいえ病院でいわゆる思春期ブロッカーを処方してもらうことができるのは控えめに言ってすごくいいな~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~と思った。国によって薬がある/なしではなく、ノンバイナリーについて専門的な知識のある医者が生活圏内にある病院にいて、望めばそういった薬が服用出来て、親身になって健康のことを考えてくれる環境にいる人はかなり少ないだろう。更に医療の遅れた日本ではなおさら。ヘルジャパンではノンバイナリーやトランスジェンダーの子どもも大人も自分の尊厳を守ることが難しいので……。
もちろん思春期ブロッカーを使った方がいいとかそうでないとかではなく、選択肢は多ければ多いほどいい。

ところで、Amazonビデオの字幕は誤字脱字が多く、適切でない位置での改行や1秒以内で消えてしまったり、自然な言葉づかいではなかったりといった読み辛さが目立つ。あと、性同一性障害という診断名はDSM5で性別違和に変わったはずでは……(日本語話者に対して分かりやすく言い換えたのかもしれないが、当事者不在の配慮は絶対に必要ない)。「ジェンダー・アイデンティティ」も「性同一性」ではなくそのままでいいと思う。
シャチ状球体

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