レズに目覚めた妻により自宅を追い出されたゲイの夫（池島ゆたか）が、古き友人でもある同僚（清水大敬）の妻が、密かにソープランドで働いていることを知ってしまう。性愛の多様性を人情喜劇調に描いている、新東宝配給のピンク映画。

カットが変わるたびにハッとする映像が飛び出してくる、細山流映画術の真骨頂。今にも散らかりそうなドラマがコンパクトにまとめられており、寺山修司とジョン・ウォーターズを掛け合わせたような、融通無碍ともいえる世界観が作られている。

ラブホテル経営者の青年を恋人にもつ主人公が、同僚の妻（橋本杏子）とソープで遭遇。互いに体の相性が良いことに気づいてしまう。同僚夫婦の描写もまた痛快であり、自宅内にソープのプレイルームを拵えているところが笑える。

セクシャリティに翻弄される人間の生態を、軽いフットワークを駆使しながら、滑稽譚のように表現。同性愛カップルの痴話喧嘩を、男女カップルのそれと同列に描いているところが醍醐味。

男と女、女と女、男と男、ボタンかけ違えたりいつのまにか戻ったり…うまいなぁ。どんなシチュエーションでも空間づくりは手を抜かず楽しませてくれる。新宿の空中バーには男ふたり。しのざきさとみさんの水中に沈んだ電話のシーン素晴らしい。ラストひとりになった影田があるく雨の新宿だけはそのままリアルなのも印象深い。池島さんに山本竜ニサン清水大敬サンに…このメンツですらメローな気持ちにさせる細山マジック。

細山智明ギャグセン高すぎる。なんとなくこういうタイプの人ってもし仮に映画監督じゃなくて別の職種に就いたとしても成功出来るんだろうなと思った。清水大敬、どこかで見かけたお顔だ…と思ったらサトウトシキ『タンデム』のあの人ですよね。親友の奥さんから貰った酒のつまみを毎度頷きながら食べるのが見てて癖になる笑。ロマンポルノが衰退し成人映画のあり方について問われた時代に、ヘンテコ手入れを加えず（加えられず）こうも普遍的なセックスライフを描けているのって実はかなり資料的価値があるのではないか。監督のほかの作品も見たい。

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