ShinMakita

海の夜明けから真昼までのShinMakitaのレビュー・感想・評価

海の夜明けから真昼まで(2022年製作の映画)
2.5


千葉、勝浦…

高校三年の工藤麻衣は、男に1ヶ月以上も監禁され、病院で治療を受けたのち復学する。腫れ物に触るように、生徒たちは彼女に近寄ろうとはしなかったが、同じクラスの氏家だけはデリカシーのカケラもなく、「男とヤリまくったんだろ、俺にもヤラせろ」と言い寄ってきた。氏家は先日ケンカ騒ぎを起こし、野球部の甲子園出場という夢をぶっ潰した張本人。野球部のみならず教師やクラスメイトたちから忌み嫌われる問題児だった。日々荒れていく氏家を見ていた麻衣は、彼のために「ある行動」を起こしていく…


「海の夜明けから真昼まで」



以下、ボクはネタバレになりたい。


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監禁した側・された側が親密になっていく話といえば、まぁ実は監禁じゃないんだけど「流浪の月」、そして「完全なる飼育」が思い浮かびます。本作もそういう話かと思ったら、実は全然違ってて、嬉しい驚きがありましたね。

一般的常識、あるいは皆が共有する価値観からズレた人間は、静かに排除されていく…これはもはや現代社会の掟のような物で、「淘汰」という言葉で当然のように受け入れられている事実です。この映画は、排除された大人(監禁男)が排除候補の少女に「戦え」と鼓舞し、その少女もまた排除寸前の少年の心に光を挿してやるという、一言でいえば〈救いのリレー〉話。冒頭引用されるルカの福音から読み解くなら、誰かが1匹の迷い羊になったら、他の誰かが羊飼いになるよってハナシなんだと解釈しました。説教めいてもいないし、青春映画として物語が成立している上、麻衣役・羽音ちゃんの透明感と、トンネル・堤防・海のロケーションの素晴らしさが相まって、極めて良質な日本映画だと言えます。無駄も自己満足もない脚本と演出も良かったし、尺も短いし、観て良かったと素直に言える一本。「みんなって誰だよ」「暴力的な善意」など、意味深だったりキャッチーだったりなワードも多く、もう一度観て咀嚼したいと思う吉祥寺からの帰り道でした。
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