トッシー

海の夜明けから真昼までのトッシーのレビュー・感想・評価

海の夜明けから真昼まで(2022年製作の映画)
3.8
監禁された少女と
監禁した男
抑えきれない衝動に苛まれる少年

それは赦しか?
気休めか?

マイノリティと言われる人々の
生きづらさと生き方の物語。



77分の短編映画。

原作は漫画です。
うめざわしゅんの短編集
「一匹と九十九匹」に
収録された一遍を、

原作に惚れ込んだ林隆行 監督が
ほとんど自主制作で映画化した意欲作。



原作も読んでみたんですが、
ほとんど原作通りの展開に
オリジナルの観せ方を織り交ぜながら

丁寧な映像と演出で、
若い俳優陣の瑞々しい演技を
切り取った一本。

厭世感ただよう世界観の中に
どこかしら、
爽やかさも感じさせるあたり

ちゃんと青春映画でもあるな、
…と思いました。

特に主演の高校生2人を演じた
羽音と上村侑が良かった。

ヒリヒリさと透明さの
入り混じった異物感と清涼感。

この2人のおかげで
青春っぽさは、原作よりも
出ていたかもしれませんね。



ちなみに、

テーマは「赦し」
…らしいんだけど

個人的に思うに

赦されないよなあ…

本当はきっと、
誰も赦されないんよね。

だって、「生きづらさ」は
倫理とか経済とか関係とか
色んなものに複雑に影響されて

もはや単純に赦す赦さないの
話ではなくなってきているし。

多様性を謳うこの世界でも
他者から絶対に認められない
「自由」や「愛情」もあるわけで…

やっぱりみんな、ほとんど、
どっか赦されないんじゃないかと思う。

どこかしら生きづらさを
抱えているんじゃないかと思う。

だけど、やっぱり
この映画の主人公達のように
社会から明確に
マイノリティの烙印を押されちゃうと

特段しんどいのも分かるんですよ。



だから、
やっぱり、

赦されないと
分かっていても…



結局は






赦してほしいのよな!!!!









…このラストの展開は
あの2人にとって、
互いに、ただの気休め、だったと思うし、

よくよく考えると
凄く陳腐だったと思うんだけど、

それでも
気休め上等なんですよ。
陳腐で最高なんですよ。

大切なのは
「釈したり」「赦される」事より
「赦された」…と感じる事。

…なんじゃないかと
この映画を観て思った。

それがどうしたと言われても
そうなんじゃないかと
思ったんですよ。

気休めでもいいよ。
全然いい。

みんな、もっと気休められて
そして、隣にいる誰かを
どんどん気休めていったらええねん。

映画の冒頭、聖書からの引用があるけど
もし、この世界に神様がいなくとも

「赦し」たり「赦された」と
勝手に感じまくったらいいんですよ。

そしたら、ちょっとくらいは
「生きづらさ」も
麻痺してね…
感じにくくなるんじゃなかろうか?

だったら、ちょっとは
生きやすくなるだろう。



だから、まあ、
そのためにね。

素敵な「気休め」を得て
それを誰かに渡せるようにね。

僕はまた
映画を観たいと思いますよ。

そして、
かわいいワンコとか猫とか
動物の動画を
たくさん観たいと思いますね。




………でも、そんな気分の時は、
『コカイン・ベア』だけは観ない!

絶対!!!




『コカイン・ベア』
面白いけどね。

2023-45
トッシー

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