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ファミリアのDのレビュー・感想・評価

ファミリア(2023年製作の映画)
2.5
2023年 5本目

東京の比較的裕福な街で生まれ育ったからなのかどうか分からないが、ご近所にお住まいの外国人なんて今までひとりもいなかったし、学校のクラスにも外国人はひとりもいないか、いても一人か二人ぐらいのものだった。それも大体は中国人か韓国人。映画に出てくるような多くのブラジル人が住む団地なんて本当にあるのかよwと思って調べてみたら、どうやら本当にあるらしい。撮影の舞台になったまさにあの団地が、その団地だった。愛知県豊田市保見ヶ丘にある「保見団地」、まだ日本の景気が絶好調だった時代、世界一の自動車メーカーであったトヨタが大量の外国人労働者を雇った。当時、本当にジャパニーズ・ドリームがあったのだ。

今の日本では考えられない。物価は上がり続けながらも賃金はずっと横ばい。日本の若者は海外へ出稼ぎに行くようになった。立場は逆転してしまったのだ。せっかく日本に夢を持って働きにきてくれた外国人への申し訳無さと、かつて世界最強の経済大国だった日本の凋落ぶりの不甲斐なさが心の中で渦巻いた。

アメリカやヨーロッパでは、移民問題が深刻化し、分断が加速している。日本では外国人労働者は限定的に受け入れるものの、移民は基本的に受け入れないスタンスを持っている為、あまり移民の何が問題を呼び起こすのか、実感が沸かない人が大半だろう。自分もそうだ。でも、少し想像してみれば簡単だ。この映画のように定期的に団地の庭のど真ん中でパーティーが行われ、外国人たちのどんちゃん騒ぎが行われている様子は、客観的にみれば楽しそうでいいな、と思う。でもご近所であったらどうだろう。普通にうるせえし、地域の治安を損ねているようなことがあれば溜まったもんじゃない。

海外の貧しくて困っている国に住む家族を救ってあげたい。日本に来て幸せに育ってほしい。理想論を語ればもちろんそうだ。でも家の近くに大量の移民が住むとなれば、どうか勘弁してください。となってしまうのが悲しい現実。今後まだしばらく、世界で移民問題の議論は続くと思う。考える良い機会を与えてくれる映画だった。

見る前は、去年わりと好評だった映画「マイスモールランド」に人情味が加わった感じかな、とCMを見て漠然と思っていたが全然違った。シナリオの展開の振れ幅が大きすぎて体幹がふらつくも、役所広司の迫真の演技力でなんとか足元を支えてくれる、そんな映画だった。同じく去年の映画「ヘルドッグス」ではヤクザ界の頂点に君臨していたMIYAVIが、ファミリアでは半グレ息子に格下げになっていたのがウケた。
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