錦之助版に比べるといかにもプログラムピクチャーの一篇という感じでどうということもないが、勝新の酔いどれ演技は圧巻。
女の名を叫び散らし、飯と酒を要求しながら屋敷を走り回る。
『千と千尋』のカオナシみたいだ。

長谷川一夫が中村玉緒と恋仲になるのはそもそも無理があるので、実生活でも夫婦である勝新と玉緒のが必然ベストカップルに見える…
はずなのに、それでも「こいつはアカン」と思わせてしまうサイコぶり。

要所で三波春夫の主題歌が流れるムーディーな股旅時代劇
戦前戦後と幾度も映画化されており、今作は長谷川一夫が主演をつとめる大映版となっています

【あらすじ】
旅から旅の旅鴉、関の弥太っぺ(長谷川一夫)の旅での出会い、時を経ての因縁を描く

1.一宿一飯の恩義により殺人を請け負った弥太っぺは正々堂々とやくざ田崎潤を討ち取ります
この時に残された奥さん阿井美千子とその弟勝新太郎とは因縁が生まれます

2.旅を続ける弥太っぺは故郷の父母のお墓を建てるため貯めていた50両をスリに盗まれる
お金を取り返そうともみ合いになった結果スリは死んでしまい、その死に際に女の子を託されてしまいます
遺言に従い縁があるという旅籠に女の子を連れて行くのですがなかなか引き取ってくれないので弥太っぺは勢いで50両を付けて無理矢理置いてきちゃいます
困惑する旅籠の主人ですがその後女の子が孫だと判明し大喜び

それから10年後
勝新と再会した弥太っぺは対決が避けられそうになくなる
一方10年前の旅籠の娘(中村玉緒)は自分を連れてきてくれた恩人を探していて
玉緒の美貌に目をつけた勝新は自分が恩人だと偽りモノにしようと狼藉三昧

そこへ駆けつけた弥太っぺは玉緒を救い、勝新には説教、これにて10年前の因縁を清算し再び旅に出ます、めでたしめでたし
【感想】
昔、中村錦之助主演の「関の弥太っぺ」を見たのは覚えてるけど中身は全然覚えていないので比較しようがないんだけど、「関の弥太っぺ」ってこんなお話だったの？って感じ

自分が恩人だとは決して認めず、おじさんは遠くから幸せを願ってるよみたいないいお話？

全体的にあっさり気味な感じがする、変にクサくなくてしつこくないところは好みだけど、、、その分人物描写が浅いかなー

綺麗すぎる長谷川一夫とは対照的に勝新太郎は人間味のあるキャラクターだったのも印象的
なんていうかまだ弱いんだけど勝新らしさが見えて、そこが良かった
酔いどれて着物をだらしなくはだけさせながら中村玉緒を求めて旅籠で大暴れ、すっごいやな奴なんだけどどこか憎めないんですよね
恋が叶わずションボリ座り込む勝新見てるとなんかかわいそうにも見えちゃって、まして相手が中村玉緒だしw

その他の出演者メモ
中田康子は弥太っぺとは知り合いの女渡世人、特にストーリーには絡まない顔見せ程度の役
ダイラケは旅の商人として各地で盛り上げる、同じくストーリーには絡まない脇役

恩人の顔なんて覚えてない。
弥太っぺはサッと立ち去ってくれた方がカッコいいと思った。あわよくば娘に昔のことを思い出して欲しい感がダサい。