大道幸之丞

フィーゴ事件:世界を揺るがせた禁断の移籍の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

欧州サッカーファンなら誰でも知っている「禁断の移籍」の裏側を検証するドキュメンタリー。

スペインにはFCバルセロナとレアル・マドリーという半世紀以上続くライバルチームが存在する。

今回の主役は1995年当時「世界最高の選手」と呼ばれたポルトガルの至宝「ルイス・フィーゴ」彼はなぜ5年も在籍しカタルーニャ人に愛されたチームを事もあろうに最大のライバルチームへ移籍したのか。

この真実は謎のままだった。当時関わった人物の話はそれぞれずれていたからだ。

本作では当事者を総出演させ21年経った今だから話せる「真実」を追う。

結局フィーゴはFCバルセロナでの自身の活躍と評価を適正にしてほしかった。しかし当時の会長はそれを一蹴した。彼の心のなかに「しっかり評価してくれるクラブに行きたい」との考えが生まれてくる。

それと並行しレアル・マドリーでは会長選挙が行われており、下馬評では現会長優勢であり、劣勢挽回を考える新候補フロレンティーノ・ペレスは「私が当選した暁にはフィーゴを連れてくる」と名言する。

そこからフィーゴの代理人ホセ・ベイガらとの苦労が始まる。フィーゴは単純に「もしバルサが私の存在を評価(年俸の上乗せ)してくれるのなら残る」と考えているし、そうなってほしいと最後まで願っている。しかしタイミング悪くバルサでも会長選挙があり会長が交代し余りにもフィーゴの心情を理解できていなかった。含みと配慮のある発言すらなかった。

——そしてレアル・マドリーではフロレンティーノ・ペレスが当選。3000万ユーロの違約金も課せられる状況の中でフィーゴは移籍を決断する。
バルサの会長はフィーゴを「金の為に移籍した守銭奴」と言い放ちそれをマスメディアが煽り国民が鵜呑みにしフィーゴをなじる。

難しいところなのだが選手がクラブに求めるのは「具体的な誠意」で、それを「金」とだけ言ってしまうと元も子もない。しかし現役生活に限りのあるアスリートからすると「評価」は誠意のある会長の言葉と「年俸」の2つが合わさったものなのだ。外野である庶民はそんな事はまるで理解が出来ない。理解できるのは自分の次元に合わせた下世話で単純な話だけだ。

両会長や代理人、メディアも取材し本作を創り上げた事には賛辞を送りたい。世界トップクラスのアスリートのメンタルを識るには最高の作品だと思う。